性感帯というのは触られると感じる場所です。
なので相手の性感帯を触っても自分が感じるということは滅多にないでしょう。
それでも愛撫するのは相手に気持ちよくなってほしいからです。
しかし、それだけが理由ではありません。相手の体に触れるということ自体が興奮を呼び起こすことも愛撫する理由の一つです。
性的興奮という視点で見た場合に、性感帯は触れられるよりも、触れたいことがあるのです
そして、これには部位ごとの男女差があります。
また、触れることだけではなく、見たり見られたりといったことも性的興奮には関係します。
そこで今回は性感帯に対する性的興奮の男女差について解説したいと思います。
これを知っておくことで、前戯の質を高めることができます。
41カ所のパーツごとの興奮度の評価
バンガー大学のララ・マイスター博士らの研究を紹介します。
この研究では、613名の男女が、41カ所の体のパーツについて、以下の4パターンでどれだけ興奮するかを評価しました。
- 自分が触れたとき
- 自分が触れられたとき
- 自分が見たとき
- 自分が見られたとき
興奮度の評価は「0:全く興奮しない」から「10:非常に興奮する」までの11段階で行っています。
それぞれの回答を分析したところ、性的な部位とそうでない部位、また男女で差があることが分かりました。
性的な部位(性器、乳首、唇など)における男女差
まず、性的な部位(性器、乳首、唇など)に対する触覚と視覚の興奮度について、性別による違いが観察されました。
性的な部位に触れたい男性と、触れられたい女性
男性はパートナーの体の性的な部位に触れる方が、自分の体の同じ部位を触れられるよりも強い興奮を感じることが分かりました。
一方で、女性は自分の体の性的な部位を触れられる方が、パートナーの体に触れるよりも強い興奮を感じる傾向がありました。
要するに、男性はおっぱいに触れたくて、女性はおっぱいに触れられたいということです。
これは、男性が性的に積極的な傾向を持ち、女性が受動的な傾向を持つことが原因と考えられます。
性的な部位を見たい男性と、見られたい女性
この傾向は視覚についても同様でした。
つまり男性は女性の性的な部分を見ることで興奮し、女性は見られることで興奮するということです。
これは男性が視覚情報から女性を評価する傾向があることが原因と考えられます。
また、女性が見られることに対して高い価値を置き、視覚的な注目が自己評価や性的魅力の確認と結びついていることも一因となっている可能性があります。
非性的な部位(首筋、肩、手など)における男女差
首筋や肩などの非性的な部位に対しても、男女差がありました。
非性的な部位に触れたい女性と、差のない男性
女性はパートナーの体の非性的な部位に触れる方が、触れられるよりも強い興奮を感じる傾向がありました。
男性は非性的な部位に関しては、触れる場合も触れられる場合も、興奮度に差はありませんでした。
非性的な部位を見たい女性と、差のない男性
視覚についても同様の結果でした。女性はパートナーの非性的な部位を見る方が、見られるよりも興奮が強い傾向にありました。
男性は非性的な部位を見る場合も見られる場合も、興奮度に差はありませんでした。
非性的な部位において女性が積極的なのは、感情的な接触や視線同士の交流を通じて、より深いつながりや親密さを求める傾向があるからと考えられます。
性感帯の鏡効果
この研究ではさらに注目すべき発見がありました。まるで鏡のような効果が起こることが分かったのです。
自分が触れられることで興奮する部位に関しては、パートナーの同じ部位を触れても自分が興奮するのです。
パートナーの体に触れることで、自分自身がその同じ部位を触れられているかのような感覚を得ることができ、これが性的興奮を増幅させる要因となり得るのです。
この「性感帯の鏡効果」とでもいうべき現象を活用することで、刺激を増幅し合えば、愛撫がより良いものとなるかもしれません。
参考文献:Maister L, Fotopoulou A, Turnbull O, Tsakiris M. (2020). The Erogenous Mirror: Intersubjective and Multisensory Maps of Sexual Arousal in Men and Women.