セックスレスの悩みを抱えている女性から「フェロモン香水を使ったら夫の性欲が回復しますか?」と聞かれることがあります。
結論から言ってしまうと不可能だと思います。
そもそも人間にフェロモンが存在するのかは分かっていませんし、フェロモンの可能性があるとされていた物質にも媚薬のような効果はないということが実験からも分かっています。
人間は匂いの影響を受ける
人間が匂いの影響を受けそれが判断に影響するということは分かっています。
有名な実験なので知っている人もいるかもしれませんがベルン大学が男性が着用したシャツの匂いを女性に判断してもらうという実験を行いました。
すると女性は自分とはかけ離れた遺伝子の型を持つ男性のシャツの匂いを好きと評価したのです。また彼氏や元カレを思い出しやすい匂いであるとも判断しました。
これは強い子孫を残すために自分と異なる遺伝子を持つ相手を求めるからではないかとされています。
フェロモンは全ての人間に作用する
しかし上記の実験で人間が判断したのはフェロモンではありません。あくまで個人的に好きな匂いを嗅ぎ取っただけです。
仮に特定のフェロモンが存在するとしたら全員が好きと判断する匂いはそれを最も多く持つ人間に集中するはずです。
そもそもフェロモンとはただの匂いのことではありません。フェロモンとは同種の他個体に特定の行動や生理的な変化をもたらす化学物質のことです。一部の人間にしか作用しないのではなく全ての人間に作用するのがフェロモンなのです。
人間においてはその物質が何なのかは特定されていません。そもそもフェロモンが存在するのか?存在するとしてそれを受容する器官はきちんと機能するのか?ということさえ分かっていないのです。
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フェロモンとされていた物質に効果がなかった
人間のフェロモンではないかとされていた物質として男性の汗などに含まれるアンドロスタディエノンと女性の尿に含まれるエストラテトラエノールの2種類があります。
フェロモン香水として販売されている商品に含まれていることが多いのもこれらの化学物質です。
西オーストラリア大学がこれらの物質が本当に媚薬のような働きをするのか確かめた実験があります。
アンドロスタディエノンとエストラテトラエノールの匂いを嗅がせた状態で中性的な顔立ちの写真を見せ、それが異性に見えるか同性に見えるか?と異性に見える場合にはどれだけ魅力的か?ということを判断させたのです。
仮にアンドロスタディエノンとエストラテトラエノールにフェロモンとしての効果があるのだとしたら他の物質を嗅がせた状態のときよりも異性と判断する確率と魅力的と感じる確率は高くなるはずです。
しかし結果はアンドロスタディエノンとエストラテトラエノールも判断には何の影響も及ぼさなかったのです。つまりこれらの物質がフェロモンではなかったということです。
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フェロモン香水の効果があったという人に会ったことがない
バラの匂いが顔の評価を高めるとか、甘い匂いのする場所ではナンパ成功率が高くなるなど良い匂いが良い印象につながるという実験は複数あります。
しかし香りの好みは個人差がありますからあなたの夫や彼氏がそれらの匂いが好きかどうかは分かりません。仮に好きだったとしてもそれが性欲を高める効果まであるかは分からないのです。
フェロモン香水のような科学的根拠のないものに騙されないように注意してください。相談に来る女性の中にもフェロモン香水を使ったことがあるという人がときどきいますが今のところ効果があったという人はいません。
フェロモン香水をつかうくらいであれば自分の匂いを嗅がせたほうが効果は期待できます。排卵前の女性の匂いが男性をムラムラさせるという研究や興奮した女性の汗の匂いが男性のセックスへの欲求を高めるという研究もあるのです。
バラの香りがする人は美人と判断される
とはいってもですね、女性の香水の匂いが好きという男性は当然います。
ではどんな匂いが良いのでしょうか?
それはバラの香りです。それによって美人に見られやすくなります。
匂いの情報は脳に直接届く
フェロモン香水に効果はありませんが、香りは人の感情や判断に影響を与えるものです。
昔、好きだった人がつけていた香水の匂いを嗅ぐと、何年経っていても当時の思い出が蘇り、胸がチクッとするという人もいるでしょう。
匂いの情報は脳に直接届きます。そして記憶に関係する海馬や、感情に関連する扁桃体などに連絡します。
これが香りによって心が動く仕組みと考えられています。
バラの香りが女性を美人に見せる
良い香りは外見の評価を高めてくれることもあります。
嗅覚刺激の「快・不快」が視覚情報の判断にも関係するということです。
香りが顔の評価にどのような影響を及ぼすか調べた、アメリカのモネル化学感覚研究所の実験があります。
この実験では心地良いものとしてバラの匂いが、不快なものとして魚の匂いが用いられました。
それぞれを合成し、「100%バラの香り」から「100%魚の香り」まで11段階のサンプルを作成しました。
そして、実験参加者にそれぞれの香りを嗅がせながら、女性の顔写真を評価させました。
参加者の評価を集計すると、バラの香りが強いときほど、魅力的と評価されることが分かりました。
気分が良いときに見たものは高評価する
顔を見て美人と思うかどうかは瞬間的に行われる感情的な判断です。
そのため、その時の自分自身の感情の影響を受けます。
気分が良い時は高評価をしやすく、気分が悪い時は低評価をしやすくなるのです。
バラの香りによって気分が良くなっている状態で、女性の顔を見ると魅力があると評価しやすくなるということです。
モテたい人はバラの香りのフレグランスをつけると良いかもしれません。
寝室が臭いと興奮が抑制されてしまう
ところで自宅の寝室はクサくないでしょうか?
先ほどの効果と逆で、クサいと不快になりますから、夜の営みをするモチベーションが上がりません。
また、嫌悪感は興奮を抑制してしまいます。(参考:寝室が汚いとレスになる)
せっかく良い雰囲気になっても「クサッ!」と思った瞬間に萎えます。
臭いに対する敏感さには個人差がありますから、あなたは何も感じていなくとも、パートナーは気になっている可能性もあります。
寝室がクサい原因は枕や布団に染み込んだ人間の匂いであることが多いです。
夜の営みがご無沙汰になっているカップルはバラの香りのファブリーズで消臭した方が良いかもしれません。
人間は匂いから異性の健康状態を調べることもあります。
クサいと「健康状態が悪いので強い子孫を残せない」と判断されます。性的興奮が喚起されないのです。
自分自身が不快な臭いを発していないかも見直しましょう。
<参考にした論文>
・MHC-dependent mate preferences in humans.
・Putative sex-specific human pheromones do not affect gender perception, attractiveness ratings or unfaithfulness judgements of opposite sex faces.
・Odor Valence Linearly Modulates Attractiveness, but Not Age Assessment, of Invariant Facial Features in a Memory-Based Rating Task.