長年連れ添っても夫婦間の恋愛感情がなくならない人の特徴

夫婦が長年一緒にいたら恋愛感情がなくなる、というのが定説です。

脳内で分泌される恋愛に関連するホルモンが抑制されるのですから、これはある意味当然のことです。

実際に当方にレスや夫婦問題の相談に来られている方々も、その多くが夫(妻)に対する恋愛感情はゼロですといった感覚です。

とはいえ、何十年も一緒にいるのに、いまだに夫婦間の恋愛感情、つまり「愛している」という感覚が続いているという人もいます。

このような人たちにはどんな特徴があるのでしょうか?

それを調べたのがニューヨーク州立大学のダニエル・オレアリー教授らの調査です。

結婚生活30年以上でも40%の人は「非常に強く愛している」

この調査では20歳から93歳までの男女500人(平均交際期間は約20年)を対象に、パートナーのことをどれだけ愛しているかを、聞き取りました。

具体的には「非常に強く愛している」から「全く愛していない」までの7段階で回答してもらっています。

このアンケートの結果、最も多かった回答は最上級の「非常に強く愛している」というもので、女性では46.3%、男性では49.0%がこの選択肢を選びました。

さらに驚くべきことに、結婚生活が30年以上の参加者でも、女性の40%、男性の35%が「非常に強く愛している」と回答しました。

夫婦間の恋愛感情がなくならない人達の5つの特徴

この結果を見て、個人的には「そんなにたくさんいるわけないだろ」というのが正直な感覚です。

私がレスの相談という仕事をしているため、夫婦間の問題を抱えた人たちとの関わりが多いせいで、そう感じている可能性もありますが…

また、「社会的望ましさのバイアス」といって、回答者が他の人から好意的に見られるように答えてしまう、という心理傾向が出ている可能性もあります。

それでも、4割前後が妻や夫を「非常に強く愛している」と言っているのは、割合として高すぎるでしょう。人間の脳の仕組みを考えても不思議です。

このような高い数値が出ている理由はおそらく「愛している」という言葉の意味の幅広さだと思います。

一般に恋愛感情からくる「愛している」は、恋愛初期のドキドキした興奮を指します。

しかし、長く一緒にいる夫婦においての「愛している」には、穏やかではあるけれど、もっと深い愛情が含まれています。それを指して「愛している」と答えているのでしょう。

当然、こうした愛情は夫婦関係をうまくいかせるうえで大切なものですし、何よりも恋愛初期のドキドキが失われ、興奮によるセックスができなくなった後でも、レスにならないためには、絶対に必要な感覚です。

実は今回の研究チームは、30年近く連れ添っても「愛している」感覚を持っている夫婦の言動や心理傾向に注目し、そこに共通点があることも突き止めています。

以下は、その中でも特に明確に現れていた5つの特徴です。

①パートナーをポジティブに捉えている

長続きする愛の基本的な土台は「相手のことをどう見るか」にあるようです。

今回の調査では、相手の良い面に目を向け、短所や過去の不満を必要以上に引きずらない人ほど、「強く愛している」と答えていました。

たとえば、「忙しくて家事をやらない夫」に対して、「頼りない」と感じるよりも「仕事を頑張ってくれている」と捉える姿勢。

こうした「ポジティブな解釈のクセ」が、関係を良好に保つ大きなカギになるようです。

これは心理学でいう「ポジティブ・イリュージョン(肯定的な錯覚)」に近く、理想化しすぎない程度に相手を「良い存在」として認識することが、愛情の維持につながると考えられます。

②離れているときも相手のことを思い出している

相手のことを思い出すというのは一見、些細なことのように思えるかもしれませんが、「心理的なつながりの強さ」に関係する重要な行為です。

調査でも、離れているときに相手のことをどれだけ考えているかが、強い恋愛感情と深く結びついていることが明らかになりました。

これは、「思い出そう」と意識するというよりも、無意識のうちに頭に浮かんでくるかということです。

つまり、恋愛感情が長続きする夫婦は、物理的な距離があっても、心理的には相手とつながっている時間が長いのです。

こうのような関係になるためには、普段からお互いを大切に思いやることが必要です。

③スキンシップを大切にしている

ハグやキス、手をつなぐ――。こうした日常の触れ合いは、長年連れ添った夫婦の間でも、恋愛感情を維持するためにとても重要です。

調査では、スキンシップの頻度が高いほど、「非常に強く愛している」と感じている割合が高いことがわかっています。

さらに注目すべきは、まったくスキンシップのない夫婦の中に、「強く恋している」と答えた人は一人もいなかったという点です。

つまり、性行為がなくても愛情の表現としての身体的ふれあいは極めて重要ということです。

④一緒に新しいことに挑戦している

一緒に新しい体験やチャレンジをすることが、恋心を再燃・維持させる要因になることも示されました。

これは「自己拡張理論(self-expansion theory)」と呼ばれ、人は他者との関係を通じて自分を広げようとするときに、強い愛情や満足感を感じるという理論に基づいています。

これには次のような行動が効果的とされています。

  • 一緒に料理教室に通う
  • 行ったことのない場所へ旅に出る
  • 新しい趣味に一緒に挑戦する(ダンス、ガーデニングなど)
  • ボランティアや地域活動に参加する

夫婦関係にマンネリを感じているなら、「新しさ」を取り入れることが特効薬になるかもしれません。

⑤人生そのものに前向きな情熱がある

「恋愛関係以外のことにも情熱を持っていること」が、恋愛感情の持続と関係していることも分かりました。この傾向は特に女性で顕著でした。

仕事、趣味、政治、地域活動、スポーツ観戦など、何かに夢中になっている人は、恋愛面でもエネルギーを保ちやすいようです。

これは脳科学的にも裏付けがあり、「何かに夢中になるときの脳の報酬系(快楽回路)」は、恋愛感情と共通する部分が多いことがfMRI(機能的磁気共鳴画像法)による研究で報告されています。

つまり、人生のどこかに情熱がある人は、恋する力も衰えにくいということです。

レスでも愛している人はいる

ちなみに、今回の調査では過去1年の性行為の有無についても確認しています。

その結果、過去1年で全く性行為がないという人でも「非常に強く愛している」という人たちは2割ほどいました。

特に年齢が高い人に多い傾向がありました。

しかし、スキンシップが全くないという人たちの中で、「非常に強く愛している」という人は1人もいませんでした。

たとえレス状態であっても、肌の触れ合いは大切なようです。

とはいえ、気軽に性的な部分に触れさせるのだけは絶対にNGです。余計にレスが加速します。

☑︎セックスレスだけどスキンシップはある状態が危険な理由

参考文献:O’Leary, K. D., Acevedo, B. P., Aron, A., Huddy, L., & Mashek, D. (2012). Is long-term love more than a rare phenomenon? If so, what are its correlates?