かつてヨーロッパの一部地域では新婚夫婦が蜂蜜酒を飲んで一ヶ月ほど子作りに励む習慣があったそうです。
蜂蜜に性欲増進や滋養強壮の効果があると考えられていたのです。(ただし性欲を上げる食べ物についての研究では効果が否定されています)
この風習がハネムーン(HoneyとMoon)の語源という説もあります。
こういった例に限らず、お酒を飲むとムラムラとエッチな気分になるという人は少なくありません。
実際のところ、アルコールに性欲を高める効果はあるのでしょうか?
なぜお酒を飲むとムラムラするのか?
お酒を飲むとぜムラムラするのにはいくつかの理由が考えられます。
テストステロンが増えるのか?
男性ホルモンの一種であるテストステロンが増えると性欲が高まるといわれています。
では飲酒によってテストステロンは増えるのでしょうか?
ヴェローナ大学の研究によると女性はアルコールを摂取することで、テストステロンが増えるという結果が出ています。
しかし、他の研究ではアルコールによってテストステロンの量が減るという結果も出ていますから、量や条件によって変わる可能性が高いです。
飲酒で本能的な欲求を司る大脳辺縁系のはたらきが活発になる
お酒を飲むとムラムラする原因として脳への影響も考えられます。
私たちは普段、大脳新皮質のはたらきによって理性を保っています。
どんなにムラムラしても「セックスしたい!」と叫ばないのはこのためです。
しかし、飲酒によって、大脳新皮質の機能が低下します。
すると、性欲などの本能的な欲求を司る大脳辺縁系のはたらきが活発になりそれが出てくるのです。
また、飲酒によって快楽に関係するドーパミンの分泌が増えることもエッチな気分を高めるのに寄与しているのではないかといわれることもあります。
お酒を飲むと異性が魅力的に見える
酔っぱらったせいで全くタイプではない相手とワンナイトラブをして後悔した経験はないでしょうか?
これはお酒によって開放的になったり、冷静な判断ができなくなることが理由として考えられます。
それともう一つ「ビールゴーグル効果」も挙げられます。これは飲酒によって異性が魅力的に見える効果です。
ブリストル大学の実験でも、適度な量の飲酒によって、異性の顔を通常よりも高く評価してしまうことが分かっています。
ただし、飲み過ぎるとこの効果はなくなります。ワインで500mlを超えるとビールゴーグル効果は消滅します。
つまり、一杯程度であれば、異性を魅力的に感じますが、それ以上ではアルコールの効果は発揮されないということです。
とはいえ、ほろ酔いのときこそ、ムラムラするという人もいるでしょう。これはお酒を飲むと性的に興奮するという思い込みによるプラシーボ効果かもしれません。
お酒と性的なリスクの関係
エッチな気分を盛り上げるのにお酒は良さそうな気がします。
しかし、デメリットも存在します。
飲酒量が多いと危険なセックスに従事する
飲酒量の多いカップルほど妊娠や感染症のリスクについて話をする機会が少なく、危険なセックスに従事しやすいことが分かっています。
実際にコンドームを使用する可能性も低いという統計データもあります。
また、飲酒によって一夜限りのカジュアルセックスをする可能性が高いことも分かっています。
さらにそのような行為を後悔するものの、次回以降も同じように繰り返す傾向にあります。
アルコールと性機能の関係
アルコールは男女の性機能にも悪影響を与えます。
飲酒をすることで男性は勃起しにくくなったり、早漏や遅漏になりやすいのです。
女性もアルコール摂取と性機能障害の関連性が指摘されています。
「酒は百薬の長」ではない
ワシントン大学の実験では飲酒した男性は女性を性的対象として知覚しやすくなることが分かっています。
セックスレスのカップルは一緒にお酒を楽しむことから始めてみるのも良いでしょう。
一緒にお酒を飲む夫婦ほど結婚生活への満足度が高いという調査もあります。
しかし、ベロベロになるほど飲んでしまうと逆効果ですし、リスクも高いので注意しましょう。
ちなみにたとえ少量であっても毎日飲酒する習慣のある人は脳が委縮しやすいという研究もあります。
「酒は百薬の長」と言うのは科学が発展していない時代の言葉ですから、気をつけましょう。
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参考文献
・Cigolini M, Targher G, Bergamo Andreis IA, Tonoli M, Filippi F, Muggeo M, De Sandre G. Moderate alcohol consumption and its relation to visceral fat and plasma androgens in healthy women.
・Jana Van Den Abbeele, Ian S. Penton-Voak, et al. (2015). Increased Facial Attractiveness Following Moderate, but not High, Alcohol Consumption.
・George WH, Stoner SA, Davis KC, Lindgren KP, Norris J, Lopez PA. Postdrinking sexual perceptions and behaviors toward another person: alcohol expectancy set and gender differences. J Sex Res. 2006 Aug;43(3):282-91.