セックスの頻度はそれなりにあるけれどいつも妻である自分から誘っている…。
夫はそれほど自分とのセックスに乗り気ではないのだろうか?
このままいくとセックスレスになる危険もあるのでは?
そんな心配をしている女性もいるかもしれません。
妻から誘われることで興奮してくる夫もいる
女性の場合はセックスしたい気分でなくても彼氏や夫に誘われて、イチャイチャしているうちにだんだんと盛り上がってきて性欲が高まることもあると思います。
女性の性欲はゆっくりと上昇してゆっくりと下降するともいわれます。雰囲気や流れの影響も関係しますから自然なことかもしれません。
これと反対に男性の場合は「ヤリたい」と思ったら最初から激しく興奮していることが多いです。
最初は乗り気でなかったけれど妻から誘われて前戯をしているうちにだんだんとエッチな気分が沸いてきて…というイメージはないかもしれません。
しかし中にはこのような受動的ともいえる性欲のパターンを持つ男性もいるのです。割合でいうとかなり低いですが…。
いつも妻であるあなたから誘ってセックスをしているけれど、旦那も興奮しているし満足もしているように見えるのであればこのパターンかもしれません。
そうであれば妻から誘うのが当たり前となっていてもそれほど気にしなくて良いかもしれません。
18歳から75歳の2215人の男性の性欲パターンを調査
男性の中にも誘われることでその気になる反応的な性欲パターンがあるのか?ということを調べた研究があります。
ザグレブ大学のアレクサンダー・シュトゥルホーファー教授らが18歳から75歳の2,215人の男性を調査したものです。
この調査では参加者にアンケートを行い自分の性欲パターンが次の3つのどれに当てはまるかを確認しました。
- 性欲の低下を感じている(23.6%)
- 性欲の低下を感じていないがセックスはたいてい最初は望んでいない状態で相手からの誘いでする(2.5%)
- 性欲の低下を感じておらずパートナーが望んだからという理由だけで性行為を行うことはほとんどない(73.9%)
性欲が低下していなくても誘われてセックスをするのが日常的なパターンとなっている男性も2.5%ほどいることが分かりました。
妻のために無理しているわけではない
反応的な性欲を持つ2.5%の人たちは妻から誘われたので義務的にセックスしているのでは?と思うかもしれません。
しかしその可能性は低いと思われます。
この調査では夫婦生活の頻度と満足度も確認していたのですが、受け身な男性と自分から誘う男性の間に有意差はなかったのです。
つまり毎回のように誘われてセックスをする男性も、自分から誘ってセックスをする男性も頻度と満足度は同じということです。
性的健康に関しても差はありませんでした。
別の研究ですが夫の性欲を高めるには「妻からの欲求」を感じさせることが重要ということも分かっています。
妻に対する性的退屈さは感じているのかも
ただし一つだけ心配なことがあります。
それは性的退屈さについては反応的な性欲を持つ人たちのほうがスコアが高かったことです。
性的退屈さとは同じ相手とのセックスへの飽きやすさなどのことです。
もちろん全員がパートナーとのセックスに飽きているから受け身になっているということではありません。
もとから誘われることで盛り上がるタイプという人もいるでしょう。
しかし最初の頃は夫から誘うことも頻繁だったのに長い付き合いになるうちに妻からしか誘わなくなったのであれば、性欲はあるけれど妻には飽きているという可能性が考えられます。
イメチェンをするなどしてマンネリを打破する必要があります。
妻から誘われると嬉しいのか?夫を誘うのが怖いと思ってしまうのはなぜか?
いつも誘ってるわけではないけれど、ご無沙汰になったら自分のほうが積極的になるといいう女性もいると思います。
このときに「妻から誘われて夫は嬉しいの?」と不安を持つこともあるかもしれません。
「夫をその気にさせる方法!妻の反応が鍵だった。夫の性欲を高めるためにどうすれば良いか?」の記事でも説明しましたが、男性は女性からの欲求を感じることで、性欲が高まることがあります。
ですから基本的には妻から誘われると嬉しいものです。深刻なセックスレス状態でもない限りは妻もしたい気持ちがあるのだと知れたほうが興奮もしやすいです。
しかし、中には妻から誘われることを不快に感じる男性もいます。
特にジェンダーバイアスを持つの強い男性はこの傾向が顕著なことが研究からも分かっています。
「女から誘うなんてはしたない」という偏った価値観を持っていたりするのです。
また、自分から夫を誘うことを怖いと思ってしまう女性もジェンダーバイアスの影響を受けていることが多いです。
ジェンダーバイアスとはなにか?
ジェンダーバイアスとは男女の性差や役割に対して無意識に持っている固定概念や偏見のことです。
たとえば「男性は強く、支配的で、積極的であるべき」、「女性は受動的で、従順で、控えめであるべき」という考え方は典型的なジェンダーバイアスといえます。
これらのジェンダーバイアスは、単なる社会的な期待にとどまらず、個人の自己認識や他者との関係性にも強く影響します。
男性が「強くあるべきだ」と感じることで弱さを見せることに抵抗を覚えたり、女性が「従順であるべきだ」と感じることで自らの意見を表明することを控えるようになったりするのです。
そして夫婦間のセックスにも影響を及ぼすことがあります。
ジェンダーバイアスとセックスへの態度
ジェンダーバイアスがセックスに対する態度や行動にどのように影響するかについて、メルボルン大学のオーギュスト・ハリントン博士らの調査があります。
この調査では18歳から76歳までの男女約800人を対象に、どのようなジェンダーを持っているかとセックスに対する態度を聞き取りました。
それらの回答を分析したところ、ジェンダーの信念とセックスへの態度には関連があることが分かっています。
ジェンダーバイアスを持つ男性は妻からの誘いに否定的
まず、ジェンダーバイアスを持つ男性はセックスに対して「常に自分がリードするべき」「性に積極的であるべき」という考え方を持っていることが分かりました。
また、女性がセックスを求めることに対して否定的な考えを持ちやすいことも分かりました。これは女性を「純粋で非性的な存在」と見なしていることが原因といえます。
もしあなたの夫がこのタイプであるなら、妻から誘われることにネガティブな感情を持ってしまうかもしれません。
仮に断らなかったとしても、それは「セックスを断るのは男らしくない」という考えに基づいている可能性があります。
実際に今回の調査でもジェンダーバイアスを持つ男性は誘いを断ることを、「男らしさの喪失」と捉える傾向があることも分かっています。
誘うのを怖いと思ってしまう理由
妻であるあなた自信が誘うことを怖いと思っているケースもあるでしょう。
これには拒否されることへの恐れもありますが、あなた自信のジェンダーバイアスが関係している可能性もあります。
今回の調査ではジェンダーバイアスを強く持つ女性がセックスの開始に対して消極的になることも示されています。
「女性は控えめで受動的であるべき」という観念の影響を受けてしまうのです。
このようなジェンダーバイアスを持つ女性は「セックスは男性がリードするべき」「自分からセックスに誘うのは恥ずかしいこと」と感じがちです。
また、男性に対して持つジェンダーバイアスも自分から誘うことに対する態度に大きく影響します。
女性が男性を「常にセックスに積極的であるべき存在」と見なしている場合、女性から誘うことで男性の役割を奪ってしまうのではないかという不安を抱くのです。
逆にジェンダーバイスを持たない女性では誘うことに対してこのような不安を感じにくいことも分かっています。
ジェンダーバイスを捨てるには
ここまで見てきたように、ジェンダーバイアスは本人も気づかないうちにセックスにも悪影響を与えています。
より良い夫婦の営みのためにもこういった偏見は変える必要があります。
ジェンダーバイスを捨てるにはまず、自分がどのような性役割への信念を持っているのかを認識することが重要です。
そしてそれを批判的に考察し、それが本当に必要なものかどうかを問い直すのです。
たとえば、「女性は受動的であるべき」という信念が、自分の行動や決断を制限していると感じた場合、それが自分の幸福や成長にどのような悪影響を与えているかを考えるのです。
このような批判的思考を繰り返すことで不要な信念を手放すことが可能になるのです。
そしてジェンダーバイスを捨て去ることでより良いセックスをすることができるはずです。
<参考文献>
・Aleksandar Stulhofer , Ana Alexandra Carvalheira & Bente Træen (2012): Is responsive sexual desire for partnered sex problematic among men? Insights from a two-country study.
・Harrington AG, Maxwell JA. It Takes Two to Tango: Links Between Traditional Beliefs About both Men’s and Women’s Gender Roles and Comfort Initiating Sex and Comfort Refusing Sex.