旦那への怒りがおさまらない原因は「反芻」 適切な対処法は何か?

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旦那とケンカをしたときや、イラッとすることを言われたとき、お願いしたことをやってくれなかったときなどに怒りを感じて、それがいつまでもおさまらないという人がいます。

何日も経っているのに、思い出す度に強烈な怒りが甦るという人も。

こうなってしまう原因はあなたの脳が「怒り反芻(はんすう)」をしやすい状態になっていることにあります。

怒り反芻とは

怒り反芻(anger rumination)とは、怒りを感じた出来事や相手について繰り返し考え続けてしまう心理状態のことです。

頭の中で同じ場面を何度も再生したり、「こう言い返してやれば相手にダメージを与えられたのに」と後悔を引きずったりします。

怒り反芻は問題解決のためではなく、感情にとらわれたまま同じ考えを繰り返すことが特徴です。

そのため、心身の疲労や人間関係の悪化、抑うつや不安の増加など、さまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。

心理的な要因:攻撃と防衛を促すためのメカニズム

怒り反芻が起こる背景には、心理的・生理的な要因が複雑に絡み合っています。

心理面では、怒りは「自分の権利が侵害された」「不公平な扱いを受けた」と感じたときに生じる、攻撃や防衛行動を促すための感情です。

そのため、「どうすれば相手を言い負かせられたか」と考え続けることで、状況を整理したり次に備えたりしようとします。

人間の進化的な側面から見ると、同じ危険や不正が繰り返されないように学習するために備わっていた仕組みだったと考えられます。

生理的な要因:交感神経を活発となり冷静でなくなる

生理面では、怒りは交感神経を活発にし、心拍数や血圧、ストレスホルモン(アドレナリン、コルチゾールなど)を上昇させます。

これにより脳の扁桃体が強く反応し、感情的な記憶や危険への注意が強化されます。

一方で、理性的判断や感情抑制を担う前頭前野の働きは相対的に弱まり、冷静に切り替えることが難しくなります。

結果として注意の向き先が怒りの原因に固定され、思考が同じ道筋を繰り返す「ループ状態」に陥るのです。

こうした流れが癖になり、旦那と喧嘩をするたびにいつまでも怒りがおさまらない状態になってしまうということです。

個人差:怒り反芻に陥りやすい人の特徴

個人差も大きな要因です。完璧主義や敵意を感じやすい人、過去に繰り返し理不尽な経験をした人は、出来事を深刻に受け止めやすく、怒りを長く抱えがちです。

心理学の研究では、抑うつ傾向や不安傾向が強い人、自己コントロール感が低い人ほど、怒り反芻の頻度が高いことが報告されています。

また、慢性的なストレス状態にあると自律神経が常に高ぶった状態になり、些細な出来事でも怒りやすく、反芻も長引きやすくなります。

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怒り反芻を抑えるのに効果的な方法は何かという実験

旦那への怒りがおさまらない原因は「怒り反芻」にあることが理解いただけたかと思います。

ではどうすれば、このネガティブな思考のループから抜け出すことができるのでしょうか?

それにはニューサウスウェールズ大学の研究チームが行った実験が参考になります。

怒りを呼び起こした後で対処する実験

この実験ではまず、男女121人の参加者に嫌な出来事を思い出させ、怒りの感情を呼び起こしました。

それから参加者を4つのグループに分けて下記のいずれかを行ってもらいました。

  • 分析的反芻:出来事の原因や意味、将来の影響について書く
  • 再評価:出来事を客観的かつポジティブに捉え直して書く
  • 気晴らし:怒りとは無関係な大学キャンパスの様子について詳しく書く
  • 自発的調整:いま頭に浮かんでいることを自由に書く

上記の内容について20分間で文章を書いた後に、怒りのレベルを測定しました。

再評価と気晴らしが怒りを抑制する

分析の結果、それぞれの怒りのレベルは次のようになりました。

  • 分析的反芻:怒りはおさまらず、ほぼ同じ水準のまま維持された
  • 再評価:怒りが有意に低下。出来事をポジティブに捉え直すことで感情が和らぐ
  • 気晴らし:怒りが素早く大きく低下
  • 自発的調整:気晴らし的な内容が書けている人は怒りが低下

なぜ怒りがおさまったのか?

なぜこのような結果になったのでしょうか?

まず、分析的反芻についてはここまで説明してきた通り、「なんであんなこと言われなければならないのよ」と出来事を繰り返し掘り下げるため、その行為自体が怒りを強めてしまいます。

これに対し、再評価は「相手にも事情があったのかもしれない」「この出来事から学べることはある」といった形で出来事の意味を捉え直す行為です。

このとき脳は「攻撃された」という感覚から、「状況をどう理解するか」という建設的なものへと変化します。そのため、感情的な反応が和らぎ、怒りが少しずつおさまっていくのです。

気晴らしの場合は、そもそも怒りの出来事から注意をそらし、全く関係のない対象に集中します。

感情は注意を向けている対象に強く影響されるため、怒りに関連する考えが頭に浮かばなくなれば、自然と気持ちも落ち着いていくということです。

一時的な対処法では意味がない?

以上のことから、旦那への怒りがおさまらないという人は、肯定的な再評価や気晴らしが効果的といえます。

しかし、中には「そんな一時的な対処法では意味がない」と思う人もいるでしょう。既に実践したけれど意味がなかったという人もいるかもしれません。

確かにこれらの対処法は即効性は高いですが、根本的な解釈の変化を伴わないため長期的な効果は弱いです。

とはいえ一時的な対処法でも繰り返すことで、脳内のネットワークは変化します。

あなたが旦那への怒りがおさまらないのは、嫌な出来事があったときに「怒り反芻」が生じる脳内のネットワークが自動的につながるからです。

このつながりは「意図的につなげない」という行為を繰り返すことで変化します。

つまり、肯定的な再評価や気晴らしという一時的な対処であっても、繰り返すうちにそちらのネットワークがつながりやすくなるため、怒り反芻が生じにくくなるということです。

今回の研究では、分析的反芻であっても、感情的に没入せず、出来事から距離を置いて冷静に出来事を分析した人の怒りはおさまることも分かりました。

どうしても反芻してしまうという人は、まず自分自身と出来事の距離を置いて考える癖をつけるだけでも良いかもしれません。

怒りを紙に書き出すのは逆効果?

怒りの感情を紙に書き出すことが効果的と言われることもあります。

実際に書くことで感情が整理される効果は期待できます。

しかし、その紙をどうするかも重要です。

人によってはその紙を手元に置いておくことで、再び怒りが再燃してしまうこともあるのです。

心理学の実験では怒りを書いた紙をグチャグチャにしたり、破いてから捨てることでスッキリすることが分かっています。シュレッダーにかけるのでも良いです。

もちろん、思考の癖を修正するためのトレーニングの一貫として、感情を書き出している場合にはこの限りではありません。

怒りや悲しみの感情を書くだけではなく、それを肯定的に解釈する過程もありますから、その記録として紙を取っておいても問題はありません。

むしろ過去の感情と現在の感情を比べることで、自分がポジティブな方向に変化していることの確認にもなります。

自分の状況に合った方法を取り入れてください。

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参考文献:Denson TF, Moulds ML, Grisham JR. The effects of analytical rumination, reappraisal, and distraction on anger experience. Behav Ther. 2012 Jun;43(2):355-64.