バイセクシャルの女性から「男性とするより女性とするほうが気持ち良い」という話をよく聞きます。
異性愛者の女性でも、彼氏とのセックスより、女性店員がマッサージをしてくれるお店にハマッている人もいます。
このように女性同士の性行為のほうが気持ちよく感じる理由として、女性の体の方が柔らかいことや、同性同士なのでどこ気持ちいいか分かりやすいことなどが挙げられます。
しかし、もっと根本的な理由もあります。そしてそれを意識することで、同性愛者でも異性愛者でもより良いセックスを得ることが可能となります。
女性が持つ権利意識と期待が気持ち良さを変える
女性同士のセックスの方が、気持ちいい上にオーガズムに達しやすい理由は「権利」と「期待」です。
「セックスでイクことができていますか?」というアンケートをすると男性は9割以上が「はい」と答えます。一方で女性は5~6割程度です。
このような違いを「オーガズムギャップ」と呼びます。
オーガズムギャップが生じる原因として、男性のテクニック不足や、女性の体が慣れていないことなどがありますが、それ以上に大きいとされるのが、女性が性に対して持つ権利意識と期待なのです。
性的快楽に対する権利意識
多くの国で性交に対する古いジェンダー(社会的・文化的性差)が残っています。
具体的にいうなら、「セックスは男性が楽しむもの」「女性が快楽を追求するなんてはしたない」といったものです。
こういったジェンダーがあるため、女性は行為の中で気持ち良さを求めることを遠慮してしまうのです。
クリトリスを刺激されると感じたり、イキやすいという女性は多いですが、それを求める権利がないように感じてしまうのです。
しかし、女性同士であればそのような遠慮をする必要はなく、快楽を追求しやすくなるため、オーガズムに達する可能性も高まるということです。
オーガズムに対する期待
オナニーではイケるけど、男性とのセックスではイケないという女性も少なくありません。
クリトリスを丁寧に時間を掛けながら愛撫する男性というのは少ないですから、女性も「そんなものだろう」と思っていたりします。
これが女性同士であれば、お互いにポイントを分かっているという認識がありますから、クリトリスへの刺激と、それによるオーガズムへの期待が持てます。
このような期待は身体的な反応にも影響しますから、感じ方も変わるということです。
☑︎女性のセクシャルプレジャー(性的快楽)を生み出す要因は何か?
女性とのセックスを想像したときの方が期待は高い
上記に関連した、ラトガース大学のグレース・M・ウェッツェル博士らの研究があります。
この研究では、バイセクシャルの女性グループに、デートしてからセックスをする内容のシナリオを読ませ、どのようなことを想像するか答えてもらいました。
シナリオは相手が男性のパターンと女性のパターンの2つがあり、参加者はそのうちのどちらかを読まされました。
その結果、相手が女性のパターンを読まされた参加者のほうが、セックス中にクリトリスへの刺激とオーガズムへの期待を高く持つことが分かりました。
どちらの性別とセックスをするかによって、期待する内容が変わるということです。
また、この研究では別の女性476人にセックス中のオーガズムについて聞き取りも行っています。
参加者全体の約6割が異性愛者で、約4割が同性愛者でしたが、セックス中にオーガズムに達する確率は後者のほうが高いことも判明しています。
☑︎レズビアンはセックスレスになりやすい?「Lesbian Bed Death」の話
女性が快感を追求することの重要性を認識する
ここまでの説明で言いたいことは、男性とのセックスが劣っているということではありません。
しかし、「性」に対する古くて誤った価値観が凝り固まっていると、いつまでも良いセックスが出来ない可能性が高いことは事実です。
特に女性はメンタルが性行為中の反応に影響しやすいのです。気持ち良さやオーガズムへの期待を持つことで、体もそちらに向かいます。
彼氏や夫がイクことがゴールになっているカップルは、女性が快感を追求することの重要性を認識することで、より良いセックスをすることができるはずです。
参考文献:Dickman, K., Wetzel, G. M., & Sanchez, D. T. (2024). The Role of Partner Gender: How Sexual Expectations Shape the Pursuit of an Orgasm Goal for Heterosexual, Lesbian, and Bisexual Women.