出産は女性の体と心に大きな変化をもたらします。
出産前は性欲もあって、夫と結びつきたいとも思っていたのに、出産を機に全くそういう気になれなくなったという女性も少なくありません。
「したい」と思えないどころか「したくない」という気持ちが強いということもあります。
そして永遠にこの感覚が変わらないのではないか?と感じている女性もいます。
そこで今回は、産後に「したくない」という気持ちがどれくらで変わるのか?ということと、変わらない場合にどうすれば良いかについて説明します。
3ヵ月~半年で感情と性欲が変わる人が多い
当方にも出産後の「したくない」という気持ちが変わらないという相談をされる女性は多いです。
そのような女性の中には産後3ヵ月ほどで性欲が戻り、むしろ「したい」気持ちが強まったという人もいます。
これはこちらのアドバイスを実践していることの影響もあると思うのですが、産後から半年くらいまでというのは、ホルモンのバランスや体の形が変化する時期ですからそれらの影響のほうが大きいように思います。
つまり、産後に「したくない」という気持ちになって、何も対策を講じなかったとしても、3ヵ月から半年くらいで、改善する人が多いということです。
しかし、中には1年以上が経過しても「したくない」気持ちのままという人もいます。
このような場合は身体的な問題がないのであれば、精神的な問題であることが多いです。
産後の女性が性行為に持つネガティブな思考
産後の女性は自分が性行為をすることについて、無意識にネガティブな思考を持ってしまっていることが多いです。
そして、そのことに自分でも気づいておらず、それがしたくない気持ちに繋がっていることもあります。
例えば出産をするということは赤ちゃんの母親になるということです。特に第一子の場合はそれまでの妻から母親という役割も増えることになります。
きちんと育てなければというプレッシャーが芽生えます。すると「セックスなんかしてて良いのだろうか?」という思考が頭のどこかに芽生えるのです。
夫に対しても「赤ちゃんの父親にそういう行為を求めて良いのだろうか?」という遠慮が生じてしまうこともあります。
また、子育てによるストレスや疲労、睡眠不足によって体力が奪われると、セックスで消耗したくないというセーブが掛かってしまうこともあります。
さらには体型や女性器の変化によってボディイメージが低下すると、性に対して消極的になることもあります。
これらの影響を無意識に受け、「したくない」という気持ちが強まっているケースは多いです。
こういった説明をしてもピンとこない女性が多いのですが、精神的な要因は女性の性欲に大きな影響を与えます。
特に古いジェンダー感に縛られている女性は「母親になってまでセックスなんて…」という誤った認識を持ってしまっていることもあります。
ですから、自分の中で上記のような思考が生じていないか、点検してみることが、性欲を復活させるうえで重要です。
「性」に関するコミュニケーションの影響
「したくない」という気持ちを「したい」に変えるには夫とのコミュニケーションも非常に重要な要素です。
女性の性欲に大きな影響を及ぼすのは親密なコミュニケーションなのです。
日常生活に関することだけではなく、性的な部分においてもオープンに話し合える夫婦は、性的満足度が高いことが分かっています。
特に女性の場合は、自分がどんなことをしたいのか、したくないのかという性的自己開示と、それに対するパートナーの反応が、性欲や満足度に影響します。
夫の反応性が妻の性的満足度に影響する
ダルハウジー大学のナタリー・ローゼン博士が産後の女性を対象に、夫婦間の性に関してのコミュニケーションが、どのような影響を与えるか調べた研究があります。
この研究では産後の3回のタイミング(3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)で、産後女性にそのときの性的な満足度などを回答してもらっています。
それによると、性的なコミュニケーションにおける夫の反応性と、妻の性的満足度には相関があることが分かっています。
つまり、妻が性についてどんなことを感じているか話したとき、夫がそれをきちんと受け止め、ケアできるかどうかが、重要ということです。
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安心感が女性の「したい」気持ちを生じさせる
なぜ夫が性的な話をきちんと受け止めると女性の性に良い影響が出るのでしょうか?
それは女性がセックスをしたいという気になるには安心感が必要だからです。
女性にとってのセックスは出産と子育てに連なるものですから、安全な環境がなければそれをしようとは思えません。
夫からの安心感を得ることで「この人と一緒なら大丈夫だからセックスしよう」と思えるのです。
特に産後は実践でそれが試されている時期なのです。実際に子供がいる環境で夫の振る舞いを確かめているのです。
そこで夫がしっかりと受け止めてくれていれば「この人となら安心して子育てができる」という実感を持ちやすくなります。
夫婦間で性についてオープンに話せるのは妻だけではなく、夫にとっても同様のメリットがありますから、ぜひコミュニケーションの機会を増やしましょう。
ただし、完全なレス状態の場合はいきなり話し合いをしてはいけません。「セックスレスの話し合いは無駄どころか逆効果」となります。
性の問題が引き起こす家庭の問題
ここまで説明してきたように、産後の「したくない」という気持ちがいつまで続くかは個人差があり、1ヵ月の人もいれば半年の人もいます。1年経過しても変わらない人もいます。
そのような場合は、自分自身の中に性に対するネガティブなイメージが生じていないかを確認することと、夫とのコミュニケーションを取ることが大切となります。
性の問題は個人のメンタルの問題や夫婦関係の悪化につながることがあります。
それによるストレスが子供の情緒的な発達にも影響を与える可能性もあります。
セックスをしないことに対して、夫婦の双方が納得しているのなら良いですが、そうでないのなら何らかの対策を取ることをおすすめします。
参考文献:Rosen NO, Williams L, Vannier SA, Mackinnon SP. (2020). Sexual Intimacy in First-time Mothers: Associations with Sexual and Relationship Satisfaction Across Three Waves.