付き合い始めの頃は、彼氏のすべてが魅力的に見えていたのに、なぜか最近は嫌なところばかりが目につき、イライラすることが増えた、などということはないでしょうか?
以前は気にならなかった些細な言動に腹が立ったり、「どうしてこんなこともできないの?」と責める気持ちが湧いてしまったり。
一人でいるときも彼氏の嫌な部分ばかり思い出すということも…
そんな自分に戸惑い、「もしかして冷めてきたのかな……」と不安になることもあるでしょう。
しかし、それは必ずしも、気持ちが冷めたからではないのです。
あなたの心の中にある「スキーマ」が、彼氏の見え方を変えている可能性があるのです。
スキーマ(心の枠組み)
スキーマとは、過去の経験から学んだ情報をもとに、物事を理解したり判断したりするための「心の枠組み」のことです。
たとえば、「レストランに入ったら店員が席に案内してくれて、メニューを見て注文する」という一連の流れを自然に理解しているのも、レストランに関するスキーマがあるからです。
スキーマは、私たちが日常生活の中で何かを素早く理解したり行動したりするための土台になっています。
スキーマは一度できあがると、新しい情報を処理する際にも影響を与えます。
たとえば、犬に噛まれた経験のある人が「犬は怖い」というスキーマを持つと、道で犬を見かけたときに、たとえ大人しい犬でも警戒してしまうのです。
彼氏の嫌なところばかり目につくのもスキーマが原因
恋人に対しても、過去のやり取りから、無意識のうちに、スキーマを形成しています。
彼氏が自分のために色々と尽くしてくれていれば、「優しい人」というスキーマが出来上がります。
それによって、彼氏の行動に対する受け止め方も変わります。
たとえば、あなたが風邪で寝込んでいる時に、彼氏と電話をしていて、彼氏が早々に切り上げたとします。
このとき、彼氏に対して「優しい人」というスキーマを持っていれば、「私を休ませようとしてくれた」と判断するでしょう。
逆に「冷たい人」というスキーマを持っていれば、「心配もしてくれない」と判断するのです。
同じことをされても、どんなスキーマを持っているかによって、その受け止め方が変わるのです。
彼氏の嫌なところばかりが目につくというのも、彼氏に対して、ネガティブなスキーマを持っているせいで、何気ない行動さえ、悪いものと判断してしまっているからです。
さらに、スキーマは「どんな情報を覚えているか」にも影響を与えます。
彼氏のことを思い出すときも、悪いことばかり浮かんでくるのなら、それはネガティブなスキーマが強くなっているということです。
記憶の中で「相手の嫌な面」ばかりが強調されている状態です。
スキーマが恋人に対する判断に与える影響
ネガティブなスキーマの強さが、恋人に対する判断に影響を与えることは、コロラド大学の研究チームの実験からも分かっています。
この実験では恋人のいる男女94人を対象に、恋人に対してどのようなスキーマを持っているかと、恋人をどう評価するかを調べています。
参加者はモニターに表示される、「礼儀正しい」「冷たい」といった40個の単語が、自分の恋人に当てはまるかどうかを「はい」か「いいえ」で回答しました。
その後で、表示された単語をどれくらい覚えているかを確認する「記憶テスト」を行いました。
これによって恋人に対するスキーマが判断できます。
恋人に当てはまると判断した単語のうち、ポジティブな意味のものを多く思い出せれば、ポジティブなスキーマを持っているということです。
なぜなら、日頃から強くそう思っていることほど、記憶しやすいからです。
ネガティブな意味の単語を多く思い出すようなら、恋人に対しネガティブなスキーマを持っているということです。
ポジティブなスキーマを持っている人は恋人への満足度が高い
この実験では恋人の行動をどう評価するかも確認しています。
恋人があなたの言動に否定的な反応をしたときどう思うか?といったことを回答してもらったのです。
これらの回答を分析したところ、事前のテストで、恋人に対してポジティブなスキーマを持っている人ほど、以下の傾向が強いことが分かりました。
- 「問題の原因は恋人にある」と思い難い
- 恋人の悪い行動を「利己的である」「わざとやっている」と判断し難い
- 恋人との関係に対する満足度が高い
この傾向は、本人の気分の落ち込み(うつ症状)の有無とは関係なく見られました。
つまり、気分ではなく、スキーマによる「相手の見え方」の影響ということです。
彼氏に対するスキーマは変えられる
あなたが、彼氏の嫌なところばかり目につくというのなら、それはネガティブなスキーマを持っているからからもしれません。
それによって、悪意のない行動さえも、悪いものと判断してしまっているのです。
また、人間は自分の考えが正しいと思いたい習性を持っていますから、「彼氏は嫌な奴」というスキーマを持っていると、それを裏付けることにばかり注目するようなバイアスが働いてしまうのです。
それによって、彼氏の良い行いよりも、悪い行いばかりに注目してしまうということです。
幸い、このようなスキーマの偏りは、意識することで変えていくことができます。
彼氏のポジティブな特徴や行動を意識的に見つけて記録することで、スキーマを変化させられます。
「今日は彼がどんな良いことをしてくれたか」「自分が好きだと思える彼の特徴は何か」といったことを、定期的に書き出してみるだけでも、心のフィルターが少しずつ変わっていくかもしれません。
参考文献:Yael Chatav, Mark A. Whisman. (2009). Partner Schemas and Relationship Functioning: A States of Mind Analysis.