妻の方が収入が多いと離婚率は高まるのか調べた研究!高所得者層ほど危険な理由

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レスの相談に来る女性から「私の方が収入が高いのが良くないのでしょうか?」と聞かれることがあります。

なぜこのような質問が出るかというと、「夫より妻の収入が高い夫婦はうまくいかない」といった話が、ネットなどで語られているからでしょう。

実際に離婚率が高くなるというデータも存在します。

しかし、近年の研究では妻の方が収入が多いからといって、必ずしも離婚率が高くなるわけではないことが分かっています。

所得水準によっても変わりますし、価値観によっても変わるのです。

妻の方が収入が多いと離婚率が高くなる2つの要因

そもそも、なぜ妻の方が収入が多いと離婚率が高くなるのでしょうか?

これには2つの要因があります。

【要因1】経済的自立仮説

かつては結婚が女性に経済的な安定をもたらす手段として機能していました。つまり妻は夫の収入に依存して生活基盤を維持していたのです。

そのため、夫に不満があっても、それを我慢し続けることも少なくありませんでした。

しかし、女性が社会進出しやすい環境が整い、妻自身が高い収入を得られるようになると、夫に依存する必要がなくなります。

すると不満があるときに我慢する必要もなくなり、離婚へと踏み切りやすくなるのです。

妻の稼ぎが増えるほど「結婚の経済的な魅力」が弱まり、その結果として離婚率が高まるということです。

【要因2】役割葛藤説

「夫は外で働いてお金を稼ぎ、妻は家庭を守り子育てや家事を担う存在である」というジェンダー規範はいまだに残っています。

このような価値観が広く共有された社会では、夫よりも妻の収入が高いという状況は、その規範から外れたものと認識されがちです。

それにより、夫は「自分が果たすべき役割を十分に果たせていないのでは?」と感じて、自尊心を傷つけられることがあります。

妻は、経済的に優位に立っていることから、無意識のうちに夫を見下したり、自分の意見が優先されるべきという感覚が強まることがあります。

こうした心理状態は夫婦の間に緊張を生み、小さな摩擦が蓄積され、離婚に至る原因となります。

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妻の収入と離婚率を調べた研究

実際に妻の収入が多い夫婦は離婚率が高いのか?ということを調べた、ウィスコンシン大学のクリスティン・シュワルツ教授らの調査があります。

この調査では、『PSID(消費生活に関するパネル調査)』のデータが利用されています。これは同じ人物を対象に、数十年にわたり定期的にアンケートなどに回答してもらう形式の国勢調査のようなものです。

このデータの中から、1968~2009年に結婚したカップルを対象に、妻が世帯収入のどの程度を占めているかと、その後の離婚率の関係を分析しました。

結婚した年代によって離婚率は変わる

データを分析したところ、まず分かったことは、何年代に結婚したかによって、結果が異なるということです。具体的には以下のような違いがありました。

  • 1960~70年代に結婚した夫婦:妻の収入が多いほど離婚率が高い
  • 1980年代に結婚した夫婦:妻の収入が夫の収入を上回っていると離婚率がやや高い
  • 1990年代に結婚した夫婦:妻の収入は離婚率に影響しない

なぜ昔に結婚した夫婦ほど妻の収入の影響を受けやすいのか

妻の収入と離婚率の関係が結婚した年代によって異なる原因として、時代の変化が挙げられます。

1960~70年代は、「夫は稼ぎ、妻は家庭を守る」という性別役割が強くありました。そのため、妻が夫より稼ぐことは規範に反すると受け止められ、夫婦関係に緊張や葛藤を生みやすく、離婚につながりやすかったのです。

1980年代になると、女性の高学歴化や労働市場への参加が広がり、妻の収入が増えることも珍しくなくなりました。とはいえ、まだ「妻が夫を超える」という状況は例外的で、夫の立場を脅かすと見なされやすかったため、その場合に限って離婚リスクが高い状態は続いていたのです。

しかし、1990年代以降になると、共働きによって、夫婦双方が家計を支えるのが当たり前になりました。住宅費や教育費の上昇、賃金の伸び悩みなど経済的な圧力が強まったこともあり、妻の高収入はむしろ家庭を維持するための安定要因として評価されるようになりました。

加えて、ジェンダーロール(性別役割)に関する意識も少しずつ変化し、夫より妻の収入が多いことが「結婚の危機」とはみなされなくなったのです。

高所得者層ほど妻が高収入だと離婚率が高い理由

実はすべての層で、妻が高収入であることの離婚率への影響が消えたわけではありませんでした。

高所得者層や大卒以上の夫婦においては、時代背景が変化しても、妻の方が稼いでいる場合に離婚率が高い傾向にあったのです。

この理由として、ハイキャリアな夫ほど、収入や職業的な成功を家庭内での権威の基盤とみなす傾向が強いことが挙げられます。

そのため、妻が夫以上に稼ぐと、この基盤が揺らいでいると感じてしまい、無意識のうちに緊張や抵抗感が生まれるのです。

また、夫婦の双方がハイキャリアの場合、忙しいので家庭のことをやる時間が取りにくく、それが衝突の原因となることも多いです。

このとき、収入の多い妻は「収入に見合った分担をしてほしい」という意識が強まりやすく、夫婦間の対立が深刻化しやすいのです。

こうした複数の要因が複雑に絡まることで、高所得者層ほど、妻の収入が高いことの影響を受けやすくなってしまうのです。

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無意識に低い収入の夫を見下す高収入の妻

ここまでの説明はほとんどが、男性側の心の問題を主題としてきました。なので女性側でどうにかすることはできないと思ったかもしれません。

しかし、女性からの相談を受けていると、女性の中にある無意識が強く影響しているケースも多々あります。

夫よりも稼いでいる女性の多くは、それによって夫をバカにするようなことはないと言います。

そして、「夫は収入は少ないですけど、手先が器用でDIYとか凄いんです。私は全くそういうことができなから尊敬しています」と言ったりします。

おそらく本心なのだと思います。しかし、心のどこかでは下に見ているのです。

なぜなら、こうしたフレースは褒めるところを無理やり探して、ようやく出てきたものであることがほとんどだからです。

「大したことのない夫にも何か良いところはあるはず」と無意識に思って探しているのです。

そしてそれを伝えられた夫も、無理してフォローしてくれていると考えて、落ち込んでしまうことがあります。

夫のことを褒めているつもりで、プライドを傷つけていないかもう一度考えてみましょう。

直接的な言葉で伝えていなくとも、何気ない言動から伝わってしまうこともあります。

レスの原因は、夫がオスとしての自信を失っていることにあるケースは少なくありません。

あなた自身が無意識に夫を見下していないか振り返ってください。

収入ではなくジェンダーロール(性別役割)が大きな要因

ここで紹介した研究以外にも、妻の収入の多さが離婚率を高めるという結果が出ている研究は複数あります。

そして、それらの多くに共通する要因は、ジェンダーロール(性別役割)です。

「夫は稼いで、妻は家庭を守るべき」というものです。

逆にこうした価値観を持っていなければ、妻のほうが収入が多くとも離婚率に影響はしないということです。

妻の収入が多いか少ないかは、夫婦関係の質を決める直接的な要因ではありません。

大切なのは、収入にとらわれず、家事・育児の役割分担を現実的に調整し、お互いの貢献を認め合うことです。

ジェンダーロールに囚われなければ、妻の収入の高さは多様な夫婦のあり方を支える要素としてプラスに機能します。

参考文献:Schwartz CR, Gonalons-Pons P. Trends in Relative Earnings and Marital Dissolution: Are Wives Who Outearn Their Husbands Still More Likely to Divorce? RSF. 2016 Aug;2(4):218-236.