産後のレスも赤ちゃんのいる生活に慣れていくうちに、やがて解消するはずと思っているかもしれません。
確かにそういうパターンもあるのですが、夫側が拒否している場合には子供が小学生や中学生になってもレスのままというリスクが高いです。
なぜなら産後の夫の性欲低下は何年も続くからです。これを放置すると永遠にレスが解消できなくなります。
産後は夫側の体にも変化が起こる
産後レスになる原因として妻の体型の変化や、出産に立ち会ったことで女性器に対し赤ちゃんが出てくる場所というイメージが作られてしまうことなどが挙げられます。
また「産後のセックスレスの原因は赤ちゃんの様子を見ること?」で説明したように、睡眠の質の低下が影響することもあります。
実はそれだけではなく、夫側の体の変化も産後レスの原因となっているのです。
赤ちゃんの匂いで男性ホルモンが低下
性欲はテストステロンという男性ホルモンによって高まるとされています。
日本ではあまり話題になりませんでしたが、ノースウェウタン大学のリー・ゲットラー博士らの研究によると、妻の出産後は夫のテストステロン値が低下することが分かっています。
これは赤ちゃんの頭皮から発せられる匂いの影響ではないかなどと考えられています。
実際に子供の近くで寝ている男性ほどテストステロン値が低くなりやすい、というデータも存在します。
なぜ男性のテストステロンが低下するのか?
なぜ男性に産後のテストステロンが低下するメカニズムが備わっているのでしょうか?
実はテストステロンは性欲だけではなく、競争心にも関わるホルモンなのです。
人間を含め動物のオスは自分の子孫を残してくれるメスを獲得するために競争します。そのため、結婚前や出産前はテストステロンが多い方が有利です。
しかし、出産後は競争しない方が有利です。なぜなら赤ちゃんを育てるには周囲に協力してもらったほうが良いですし、攻撃されるリスクも低下するからです。
そのためテストステロン値を低下させ競争心を失くし、協調的な性格となるような進化的な適応が起こっているのです。
子供が大きくなった後もテストステロンは減ったまま
子供がある程度成長すれば周囲に頼る機会も減りますから、テストステロン値が回復し、性欲も復活すると思うかもしれません。
産後レスが長引いている相談者から「子供が大きくなったらそのうちレスも解決すると思ってた」と聞くことも多いです。
しかし、残念ながらその期待は裏切られることのほうが多いです。
約4,900人の男性を分析
男性の家族構成とテストステロン値の関係を分析した、ノートルダム大学の研究チームによる研究があります。
この研究では約4,900人の男性を下記のように分類し、それぞれの血中テストステロンを確認しました。
- 未婚・子どもなし
- 未婚・1人の子どもと同居
- 未婚・2人以上の子どもと同居
- 既婚・子どもなし
- 既婚・1人の子どもと同居
- 既婚・2人以上の子どもと同居
(※「既婚」には正式に結婚していないカップルもに含まれます)
子供の年齢に関係なく父親のテストステロンは低下
結果から分かったことは、まず未婚か既婚かに関係なく子供と同居している男性のテストステロン値は低いということです。
そしてこれは子供の年齢が低い(0~5歳)か高い(6~17歳)かに関係なく見られる傾向でした。
これまでは手間のかかる小さい子供がいるからこそ、協調的になるようテストステロン値が低下すると考えられていましたが、手間のかからなくなる年齢になった後もこの効果は持続しているということが分かったのです。
ちなみに子供が1人の男性よりも、複数いる男性のほうがこの傾向はより顕著でした。2人目が生まれてからレスになったという夫婦も少なくありませんが、こうした影響もあるのかもしれません。
子供本人との協調が必要となる
なぜ子供が大きくなった後もテストステロン値は低下したままなのでしょうか?
その可能性として教育・指導的な役割を担う必要が出てくることが挙げられます。
子供を正しく導くためには押さえつけるよりも協調したほうが有利なため、テストステロン値を低下させ争いにならないようなメカニズムが働いているということです。
また、子育てはある意味で投資です。子供が労働力として見込める年齢になったときには対立するより協調するほうが親が得られるリターンが大きくなることも要因といえます。
つまり、テストステロン値を低下させる目的は、子供が小さいときは妻を始めとした周囲の大人との協調でしたが、子供が大きくなった後は子供本人との協調に変わるということです。
産後レスを解消するために大事なこと
レスの相談に来ている人にはいつも言っていることなのですが、性的興奮だけで同じ相手とセックスし続けられる期間はせいぜい3年です。
それ以降はより深い愛情による動機がなければ「したい気持ち」にはなり難いものです。
とはいえ火種となる程度の最低限の性欲は必要です。夫側が他の女性にさえあまり興奮しないという状態では愛情によるセックスどころではありません。
だからといって妻側が急にエロい下着をつけたり、コスプレしても逆効果となることが多いです。
産後のレスを解消するために何が必要かは夫婦によって異なります。
自己拡張できる体験が有効なこともあれば、自己分化が有効なこともあります。
【参考】
・セックスがマンネリしたら「自己拡張」で解消しよう
・セックスレス夫婦が距離を置くための「自己分化」の方法
まず重要なことは自信を失わないことです。
産後のレス状態が継続すると「自分に魅力がないから」と落ち込んでしまう女性もいます。
しかし、ここまで説明した男性の体のメカニズムを考えれば、産後にレスになるのはむしろ自然なことと思っているくらいが丁度良いです。
そのうえで夫婦にあった様々な解決策を試していきましょう。
くれぐれもいきなり話し合いを持ちかけるような悪手をとらないように気を付けてください。
【関連】セックスレスの話し合いは無駄どころか逆効果!それでも向き合いたい人のためのステップ
参考文献:L.T. Gettler, S.H. Dennis. (2025). U.S. men’s testosterone (T), partnering, and residence with children: Evidence from a nationally-representative cohort (NHANES) and relevance to clinically low T.

