性的マゾヒズムを持つ人の心理!目覚めたきっかけと行為中に感じていること

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セックスレスの相談を受けている中で、性的嗜好についての話をされる方も多いです。

その中でも本人もしくはパートナーが「マゾです」というパターンは珍しくありません。

全く興味のない人からすると性的マゾヒズム(被虐嗜好)は、理解しにくいテーマかもしれません。

痛みや屈辱、拘束といった通常は避けたいと思われる状況に、なぜ魅力を感じ、さらには快楽を見出すのでしょうか?

今回は実際の研究データをもとに、マゾヒズムを持つ人の心理について詳しく解説します。

自分自身やパートナーの「性」についての理解を深めるヒントになるかもしれません。

性的マゾヒズムとは何か?

まず、性的マゾヒズムとは何かについて理解しておきましょう。

性的マゾヒズムはエロティックな文脈で痛み、屈辱、拘束、支配などの行為を経験することに快感を見出す嗜好です。

これらの行為は一般的にはBDSM(=日本でいうSMプレイ)という広い概念の一つとして分類されます。BDSMは同意に基づく性行為やプレイであり、参加者全員が事前に合意したルールや制限を守りながら行われます。(※1)

歴史的に見ても性的マゾヒズムや服従に対する嗜好は新しいものではありません。古代から様々な文化や宗教において痛みを伴う行為や支配と服従の関係が描かれてきました。

例えば、古代インドの『カーマ・スートラ』や、中世のヨーロッパの宗教的儀式には痛みをエロティックな文脈で利用する描写が見られます。

近代に至るまでこれらの行為はタブー視され異常なものとみなされてきました。しかし今日、BDSM行為はよりオープンに議論されるようになり心理学的な視点からも研究されています。

※1 Bondage(拘束)、Discipline(懲罰)、Sadism & Masochism(加虐・被虐)のこと。それぞれの頭文字からBDSMと呼ぶ

マゾヒストを対象とした調査

ケベック大学の研究者らが、SMプレイの実践者を対象に、なぜ虐げられるような行為に興味を持ったのか、そして行為中にどんなことを感じているのかについての調査を行っています。

この調査では、インターネットフォーラムやSNSを通じて参加者が募集され、オンライン調査形式でデータが収集されました。

参加者は自身の経験や考えを自由に記述する形式で、なぜマゾヒズムに関心を持ち始めたのかについて回答しています。

マゾヒズムに興味を持ったきっかけは何か?

回答を分析したところ、マゾヒズムへの興味のきっかけには複数のものがあることが明らかになりました。

幼少期の体験

その中でも特に注目すべきは、幼少期の経験がマゾヒズムへの関心を形成する上で重要な役割を果たしているという点です。

多くの参加者が子供の頃に体験した特定の経験が後に性的興奮や快感として再解釈されるようになったと述べています。例えば幼少期に兄弟や友人との遊びの中で、縛られたり支配されたりした経験が、その性的嗜好に影響を与えたケースが報告されています。

また、自身の心理的特質がマゾヒズムへの興味を形成したと感じている人もいます。彼らは幼少期から持っていた支配欲や服従願望が成人してからの性的嗜好に影響を与えたと述べています。

メディアと文学が与える影響

性的マゾヒズムに対する関心は個人的な経験だけでなく、文化的な要因によっても形成されることが分かっています。

調査に参加した多くの実践者は映画や文学、メディアの影響を受けてマゾヒズムに興味を持ち始めたと述べています。

BDSMがエロティックで魅力的なものとして描かれる作品は、視聴者に新たな性的興味を喚起するきっかけとなるのです。

例えば、近年の映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』はBDSMを主題とした作品として大きな話題を呼び、一般の人々にBDSMの世界を紹介しました。

このような作品がマゾヒズムに対する興味を引き起こし、さらにその実践へとつながるケースが多く報告されています。

また、文学や音楽などの他のメディアでも、マゾヒズムの要素が取り入れられることが増えており、これが人々の性的嗜好に影響を与えていることが分かっています。

マゾヒズム行為に従事する理由:行為中に何を感じているのか?

性的マゾヒズムに従事する理由と、行為中に得られる感覚もは多岐にわたります。

権力のプレイと意識の変容

実践者の多くが強調していたのは、権力プレイと意識の変容についてです。

マゾヒズム行為における権力プレイは支配と服従の役割を通じて日常生活では得られない深いエロティックな快感を生み出します。

これにより多くの実践者は支配されることや拘束されることに強い性的興奮を感じると報告しています。

さらに、マゾヒズムとしての行為は意識状態の変容を引き起こすことが多く、これが実践者にとって非常に魅力的であるとされています。

特に長時間にわたる拘束や痛みを伴う行為は深いトランス状態や瞑想的な状態を誘発します。

また「サブスペース」や「ドムスペース」と呼ばれる、お仕置き後のケア中に得られる多幸感が生まれることもあります。

これらは極限状態に近い感覚をもたらし、日常生活では体験できない特別な快感をもたらすのです。

精神的充足と治療的効果:マゾヒズム行為の心理的利点

その他のマゾヒズム行為がもたらす重要な要素は精神的充足と治療的効果です。

多くの実践者がマゾヒズム行為を通じてストレスの解消や精神的な癒しを得ていると報告しています。これには過去のトラウマや精神的な負担を解放し、心のバランスを回復する効果があるとされています。

例えばある人はマゾヒズム行為を通じて幼少期のトラウマを再解釈し、それを乗り越えることができたと述べています。

このような治療的効果はマゾヒズム行為が単なる性的快楽を超えて、深い心理的な意味を持つものであることを示唆しています。

また、マゾヒズム行為が精神的なリラクゼーションや瞑想状態をもたらすことも報告されています。

快楽の追求と親密な絆の構築

さらにマゾヒズム行為を通じてパートナーとの親密な絆を深めることも、多くの実践者にとって重要な要素です。

これらの行為はパートナー間の信頼を強化し、より深いレベルでのコミュニケーションを促進します。

共に限界を探り共有する経験は他のどのような行為とも異なる強力な結びつきを生み出し、これが性的マゾヒズムの魅力の一部となっています。

自己のアイデンティティを表現する手段でもある

性的マゾヒズムやBDSMに関する理解が深まる中で、もう一つ重要な視点があります。それはこれらの行為がどのようにして個々の自己表現の一部として機能するかという点です。

マゾヒストにとって、これらの行為は単なる性的快楽の追求だけでなく、自己のアイデンティティを探索し表現する手段でもあります。自分自身を理解し、他者との関係性を築くための道具として、性的マゾヒズムは強力な役割を果たしているのです。

さらに、最近の研究ではBDSMコミュニティがいかにして支援的で包摂的な環境を提供しているかにも注目が集まっています。コミュニティ内での経験の共有や相互の理解とサポートを通じて、実践者たちは自己を受け入れ、他者との深い繋がりを感じることができるのです。

こうした社会的な側面もSMプレイという行為が単なる個人的な行為にとどまらず、社会的なつながりを深める重要な役割を果たしていることを示しています。

このように性的マゾヒズムは単なる性的嗜好の一形態を超えて、個々の自己理解や社会的つながりの中で非常に重要な位置を占めていることがあります。これらの視点を理解し、尊重することで、自分にとってもパートナーにとってもより良いセクシャルウェルネスが築かれるのです。

余談ですが性欲はないけれどSMには興味があるという人もいます。サディストやマゾヒストの心理を理解することがセックスレス解消のヒントになるかもしれません。

参考文献:Labrecque, F., Potz, A., Larouche, É., & Joyal, C. C. (2020). What Is So Appealing About Being Spanked, Flogged, Dominated, or Restrained? Answers from Practitioners of Sexual Masochism/Submission.

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