前戯と後戯を含め、セックスにどれくらいの時間を掛けるべきかは悩ましい問題です。
男女で認識のズレが生じることもあります。
男性は「早くイッたら情けないと思われるかな?」と心配している一方で、女性は「挿入時間が長すぎて痛い」とストレスを感じていることもあります。
果たして最適なセックスの時間とはどれくらいなのでしょうか?
セックスの平均時間はどれくらいか?
そもそも平均的なセックスの時間はどれくらいなのでしょうか?
前戯と後戯も含んだ全体の時間と、挿入からイクまでの時間についてそれぞれデータを紹介します。
前戯から後戯終了までの平均時間は約30分
まず、前戯、挿入、後戯までの一連のセックスの時間についてです。
これについては複数の研究がありますが概ね似たような数値となっており、平均で約30分です。
「ジェクス・ジャパン・セックスサーベイ2020」でも男性31分、女性29.1分となっています。
年齢によっても多少の差はありますが20代でも50代でもだいたい30分前後です。
全体の約9割がセックスに1時間未満しか掛けていないことも分かっています。
挿入してから男性が射精するまでは5分24秒
挿入してから男性が射精するまでの時間はどれくらいでしょうか?
これについては性科学者のマルセル・D・ウォルディンガー博士らが5ヵ国(オランダ、イギリス、スペイン、トルコ、アメリカ)を対象に行った調査があります。
500組のカップルに協力してもらい、ストップウォッチで挿入してから射精するまでの時間を計ってもらったのです。入れるときにスタートボタンを押して、射精したときにストップボタンを押したということです。
結果はかなりバラつきがあり、早い人で33秒、遅い人で44分6秒でした。中央値は約5分24秒となりました。
また興味深いことにコンドームを装着しているかどうかはイクまでの時間に影響を与えませんでした。装着しているからといって時間が掛かるわけではなかったのです。
女性がオーガズムに達するまでの平均時間
次に、女性がオーガズムに達するまでの時間はどれくらいでしょうか?
こちらはガジャナン S. バート博士らが20ヵ国を対象に行った調査があります。
オーガズム経験のある535人の女性にセックス中にストップウォッチを使って、十分な性的興奮状態となってからオーガズムに達するまでの時間計ってもらいました。
こちらの結果も最短3分から最長40分と差がありました。平均は約13分24秒でした。
ストップウォッチで計るという行為によって雰囲気が壊れた影響も考えられますが、その他のアンケートによる自己申告の調査などでも、男性、女性ともに今回の数値とそれほど違わないものが多い気がします。
セックスの最適な時間は?
ここまで紹介したデータはあくまでも平均時間です。
その時間が必ずしもセックスに最適な時間とは限りません。
ではいったいどれくらいの時間を掛けるのが良いのでしょうか?
前戯にかけるべき時間
健康な男性であれば勃起すればすぐにでも挿入可能ですが、女性の場合はある程度、濡れてからでないと困難が伴います。
そのためにも前戯が必要ですが、どれくらいするべきなのでしょう?
女性は性的興奮により性器内の血流が増加し、血漿などが分泌されることで濡れます。
挿入に十分な濡れを得るまでの時間は個人差がありますが約20~30分といわれています。
注意してほしいのはこれは性的な雰囲気を感じ覚醒し始めてからの時間ということです。
ですから女性器への直接的な刺激をこれだけの時間するべきということではありません。
挿入にかけるべき時間
挿入にかけるべき適切な時間については、SSTAR(※1)に所属する性に関する専門家へのインタビューが参考になります。
性的問題の診断と治療に携わる医師やセラピストに、どれくらいの挿入時間が良いか聞き取りをしたものです。
それによると、まあまあ十分といえる時間の中央値は4分54秒でした。(回答の75%が3分11秒~7分22秒の範囲内におさまりました)
そして望ましいといえる時間の中央値は8分でした。(同6分37秒~12分36秒)
回答者は平均で26年の性に関する臨床経験を持っていました。その経験や研究の中から適切と判断している時間を回答しているため、非常に価値のある意見ではないでしょうか。
※1 SSTAR(Society for Sex Therapy and Research)性についての臨床や研究に携わる専門家の国際的な組織。
理想的なセックスの時間
ここまで女性器が十分に濡れるまでの時間と、望ましい挿入時間について説明しました。
これらを踏まえると、理想的なセックスは28分~38分に後戯の時間をプラスしたものといったところでしょうか?
ニューブランズウィック大学の研究者らの調査では男女とも約5割以上の人がセックスに30分以上掛けたいと思っており、約3割が1時間以上掛けたいと思っていることも分かっています。
後戯の時間と愛情指数
後戯の時間についても軽く触れておきたいと思います。
カウンセリングに来ている人の話を聞いていると、後戯の好みが人によってかなり違っています。
早くシャワーを浴びに行きたい人もいれば、セックス後のまったりした時間が一番好きという人もいるのです。
オーガズム後に抱き合ったり撫でたりと後戯をすることで性的満足度やコミットメントが高まるということは分かっています。
どれくらい後戯に掛ければ良いか具体的な数字を出すのは難しいのですが、一つの参考として「愛情指数」というものがあります。
精神科医で心理学者のレオポルド・べラックが提案したものらしいです。(※2)
以下の計算式で求めます。
(前戯時間 + 後戯時間) ÷ 挿入時間
この愛情指数が24のカップルが最も上手くいっているそうです。
さきほどまで説明した数値から24となるように計算すると最適な後戯の時間は162分となってしまいます。
ちなみにべラックによると前戯100分、挿入5分、後戯20分が理想だそうです。
確かに盛り上がっているカップルであればそれくらいするのは自然でしょう。
しかし、少しでもレス気味ならこれは長すぎると思います。セックスに対して面倒くさいというイメージがより強まってしまうので気を付けましょう。
フロリダ州立大学のアンドレア・L・メルツァー博士らの研究ではセックスしてから48時間後も性的満足度は上昇したままということが分かっています。
セックス直後のベッドの上だけではなく、その後のケアも大切にしましょう。
☑︎朝からセックスするメリットは性欲が高まりやすいことだけではない
※2 愛情指数の計算式は20年近く前から飲み会のネタで聞いたことがあったのですが、文献を見たことはないので実際のところは分かりません。
【参考文献】
・「ジェクス・ジャパン・セックスサーベイ2020」調査結果報告書
・Marcel D. Waldinger, Paul Quinn, et al. (2005).Multinational Population Survey of Intravaginal Ejaculation Latency Time.
・Gajanan S. Bhat, Anuradha Shastry. (2020). Time to Orgasm in Women in a Monogamous Stable Heterosexual Relationship.
・Eric W. Corty, Jenay M. Guardiani. (2008). Canadian and American Sex Therapists’ Perceptions of Normal and Abnormal Ejaculatory Latencies: How Long Should Intercourse Last?
・S. Andrea Miller & E. Sandra Byers (2004) Actual and desired duration of foreplay and intercourse:Discordance and misperceptions within heterosexual couples.
Andrea L. Meltzer, Anastasia Makhanova, et al. (2017). Quantifying the Sexual Afterglow:The Lingering Benefits of Sex and Their Implications for Pair-Bonded Relationships.