ストレスと性欲の研究!高まる時と低まる時の違い

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一般的にストレスは性欲を低下させるといわれています。

しかし、ストレスの種類によっては性欲を高めることもあります。

結論からいうと、短期的なストレスは性欲を低下させますが、長期的なストレスは高めることもあるのです。

日常生活におけるストレスと性欲の関係

これまでの研究では「日常生活におけるストレスは性欲を低下させる」という結果のものが多いです。

つい最近も同様の効果を説明したウィーン大学のハンナ・ミューズ博士らの論文が発表されました。

ストレスを感じると性欲が弱まる

この研究では、18歳から35歳までの同棲中の男女を対象に、14日間連続で日常生活におけるストレスと性欲の関係性を調べています。

参加者は1日に7回、そのときのストレスの度合いと性欲の強さ、性行為をしたかどうかをスマホのアプリを通じて報告しました。

また、専用キットを使ってストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量も計測しました。

参加者から得られたデータを分析したところ、男女ともにストレスを感じているときは性欲が低い傾向にあることが分かりました。

また、女性の場合はコルチゾールが多く分泌しているとき、性欲が低いことも分かりました。男性の場合は統計的に有意とはいえませんでしたが、わずかに同様の傾向がありました。

「闘争・逃走反応」によって性欲が後回しにされる

ストレスを感じている時に性欲が低くなるのは、人間の心と体の働き方を考えると自然なものといえます。

ストレスが高まった状態というのは、敵と対峙したのと同じ状態といえます。

このとき人間の体は「闘争・逃走反応」という状態になります。交感神経を優位にして、闘うにも逃げるにも有利な体のコンディションを整えようとするのです。

つまり、生存のために必要な機能が優先されるため、性欲や性的興奮のような「繁殖」に関わる機能は後回しにされるということです。

これが主観的にストレスを強く感じているときほど性欲が低下しやすい理由とされています。

☑︎性欲が高まる時期はいつか?週ごとに「sex」の検索回数を分析した結果

性欲を高めるストレスもある

とはいえ、ストレスの種類によっては性欲が高まることもあります。

心理学者のロリ・ブロット博士が2020年4月から8月にかけて行った調査があります。

覚えている人も多いと思いますが、この時期というのはコロナ禍の真っただ中で、感染の恐怖や生活が規制されることにより多くの人がストレスを感じている時期でした。

ストレスを感じている人ほどセックスや自慰をしたい

この時期に約1,000人の男女を対象に「セックスをしたいか」「自慰行為をしたいか」といったことを複数回にわたり聞き取ったのです。

それらの回答を分析したところ、ストレスを感じている人ほど、セックスや自慰をしたい欲求が強いことが分かったのです。

また、相手が望んでいないときに性行為を求める機会も増えていました。

つながりを求める気持ちが性欲を喚起

なぜコロナのストレスでは性欲が高くなったのでしょうか?

まず、ストレス解消法としてセックスを選んでいる可能性が挙げられます。外出が制限されている状況ではストレス解消法が限られるため、数少ない選択肢の一つとしてセックスをしようと考え性欲が高まるということです。

また、セックスは必ずしも性欲解消のためだけに行われるものではありません。愛情や絆を確認するための行為としても機能します。

そのため社会全体の不安が強まり、誰かとのつながりを求める気持ちが芽生えるときほど、セックスへの衝動が高まりやすいともいえます。

一口にストレスといっても、その内容や外部要因によって性欲に与える影響はプラスにもマイナスにもなるということです。

☑︎裸で抱き合うと愛情が深まりストレスも減る

「お金がない」ストレスは性欲を高める

ドラマや映画を見ているとボロいアパートでの性行為は本能を剝き出しにした描写が多く、高級マンションでの性行為は性欲解消のためだけの事務的な描写が多いような気がします。

これは的確な演出といえるかもしれません。

なぜなら「お金がない」というストレスが性欲を高める場合もあるからです。

経済的不安と性欲の関係

性科学の研究で有名なキンゼイ研究所などが行った調査があります。

こちらもコロナ禍中に行われたもので、ストレスや性欲について約1,300人の男女を対象に聞き取りしています。

この調査では経済的不安をどの程度感じているかも確認しています。

その結果、経済的不安と性欲が相関していることが分かったのです。つまりお金の心配をしている人ほど性欲が高かったということです。

なぜお金の不安が性欲を高めるのか?

なぜお金の不安が性欲を高めるのでしょうか?

これはお金がないと将来の安心感が得られず、精神的に不安定になりやすいからです。

このような状態になると心理的な安全基地として、パートナーとの絆を求めるようになります。それが性欲の高まりにつながっているのです。

また、手っ取り早いストレス解消法として、セックスやオナニーをしている可能性もあります。別の研究ですが、金銭的ストレスが高い人ほどオンラインポルノの消費頻度が高いという結果もあります。

☑︎セックスがストレス発散になる人とならない人の違い

ストレスは長期的には性的満足度を低下させる

ここまで、説明してきた研究を踏まえるとストレスの種類によって、性欲が高まるか低まるか変わることが分かります。

日々の生活の中での「ムカつくことがあった」というような短期的なストレスでは性欲は低下し、コロナ期間中や貧困のような長期的なストレスでは性欲が高まる傾向にあるということです。

とはいえ、ストレスが性欲に与える影響は個人差がありますからこの限りではありません。

3つ目に紹介した研究ではコロナによるストレスでは性欲が低下するとなっており、2つ目の研究とは矛盾する結果が出ているのです。

また、ストレスが性欲を高めるからといってレスの解消につながるのではないかと考えるのは危険です。

確かにケンカ後の仲直りセックスが興奮するという人たちもいます。

しかし、関係性におけるストレスは長期的には性的満足度を低下させることも分かっていますから、余計にセックスしなくなる可能性もあります。破局につながるリスクもあります。

二人の間にストレス要因があるなら、早めに排除しましょう。性的興奮を喚起させる方法はストレス以外にもあるのです。

<参考文献>
・Mues HM, Markert C, Feneberg AC, Nater UM. Too stressed for sex? Associations between stress and sex in daily life.
・Brotto, L. A., Jabs, F., Brown, N., Milani, S., & Zdaniuk, B. (2022). Impact of COVID-19 related stress on sexual desire and behavior in a Canadian sample.
・Balzarini, R.N., Muise, A., Zoppolat, G. et al. Sexual Desire in the Time of COVID-19: How COVID-Related Stressors Are Associated with Sexual Desire in Romantic Relationships.