夫婦でも恋人同士でも「性生活」は絆を深めるうえで、とても重要なものです。
しかし、常にお互いの「したいタイミング」が合うとは限りません。タイミングが合っても、欲望の強さに差があるということもあります。
このように性生活が合わないと、別れたほうが良いかも…。なんて思うこともあるでしょう。
しかし、その前に「性生活が合わない」という認識を変えてみてはどうでしょうか?
どう認知するかでプラスにもマイナスにもなる
どんなに上手くいっている夫婦でも、セックスしたいタイミングや、やりたいプレイが完全に一致するなどということはありません。
それでも性生活に非常に満足しているという夫婦はたくさんいます。
こういった夫婦は何が違うのかというと、タイミングが合わなかったときの認知のしかたです。
自分から誘って断って断られたときでも、「今日はそういう気分ではないんだ」と考えます。なので落ち込んだりしませんし、性的な満足度も低くなりません。
逆に、断られたとき「私たちは性生活が合わない」と認知してしまう人は、大きなショックを受けたり、性的にも関係的にも満足度が低下してしまうのです。
したいタイミングが合わない回数が同じでも、どう認知するかで夫婦関係の満足度が変わるのです。満足度は「したい気持ち」を高めたり、低下させたりします。
つまり、どう認知するかによって、プラスのサイクルにも、マイナスのサイクルにも、突入し得るのです。
「性的コミュニケーションの質」とは
では、「性生活が合わない」と認知してしまう癖を変えるにはどうすれば良いのでしょうか?
それは「性的コミュニケーションの質」を高めることです。
性的コミュニケーションの質とは、パートナーと「性」に関することをどれくらい正直に、安心して話し合えるかというものです。
たとえば、自分の好きなプレイや苦手なプレイ、不安に感じていることなどを素直に伝えられて、相手もそれをしっかり聞いてくれる関係であれば、性的コミュニケーションの質が高いと言えます。
これは単に「どれくらいの頻度で話せているか」ということではありません。「どんな気持ちで話せているか」がポイントです。
相手に否定される心配がなく、自分の考えや気持ちを気兼ねなく伝えられるかどうか、そしてお互いに理解しようという姿勢があるかが大切です。
こうしたやり取りができると、性に関するすれ違いや誤解が減り、タイミングが合わないときでも「性生活が合わない」と結論付けてしまうことを避けられるのです。
性的コミュニケーションの質が高いと「ズレ」を知覚しにくい
性的コミュニケーションの質が高いと、「性生活が合わない」と感じにくくなることは、ローマ・サピエンツァ大学ロベルタ・ガリツィア博士らの研究からも分かっています。
この研究では、1年以上の恋愛関係にある369人の男女(18~66歳)から、主に次のことを聞き取りました。
- パートナーと性についてオープンに話せているか
- どれだけ性的に満足しているか
- どれくらい「性生活が合わない」と感じているか
これらの回答を分析したところ、オープンに話せているかどうかと、知覚される性的欲求のズレとの間には、負の相関関係があることが分かりました。
つまり、性的コミュニケーションの質が高いカップルほど、「性生活が合わない」という認識が小さいということです。
また、性的コミュニケーションの質が高いと、性的満足度が高まり、その結果としてパートナー間の性的欲求のズレが小さくなることも確認されました。
なぜ「性生活が合わない」と感じにくくなるのか?
性的コミュニケーションの質が高いと、「性生活が合わない」と感じにくくなる理由は、大きく分けて二つあります。
一つ目の理由は、お互いの考えや気持ちが分かりやすくなるからです。
性的な話題をきちんと話し合えるカップルは、「どれくらい性行為をしたいか」「何をしてほしいか」「どんなときにあまりしたくないか」などを正直に伝え合うことができます。
そうすると、たとえ欲求の強さに差があっても、それを正しく理解できるので、誤解が起こりにくくなります。逆に、あまり話さないカップルでは、「相手は自分に興味がないのかも」とか「自分だけがしたいと思ってるのかな」といった誤解が生まれやすくなり、不一致があるように感じやすくなるのです。
二つ目の理由は、違いがあってもふたりで工夫できるからです。
たとえば、一方の欲求が少ないときでも、よく話し合えていれば「今はちょっと疲れてるけど、スキンシップはしたい」とか「こういう形なら応じられる」といった、二人にとってちょうどよい落としどころを見つけやすくなります。
そうすると、「性的にズレている」と感じることが少なくなり、「一緒にバランスを取れている」と思えるようになります。
さらに、なんでも話せる関係であれば、相手の変化に対しても受け止めやすくなります。たとえば、最近相手の欲求が減っていると感じたとき、その理由を聞ければ安心できますし、変に不安になったりしなくてすみます。
つまり、よく話し合うことで、欲求の違いそのものが小さく感じられたり、たとえ違っても気にならなくなったりするため、「性生活が合っていない」と思うことが少なくなるのです。
別れを考える前に、性的コミュニケーションの質を高めてみましょう。
もちろん、なんでもオープンに話し過ぎると、恥じらいがなくあんり興奮しにくくなりますから、そこは気をつけてください。
参考文献:Roberta Galizia, Annalisa Theodorou, et al. (2023). Sexual Satisfaction Mediates the Effects of the Quality of Dyadic Sexual Communication on the Degree of Perceived Sexual Desire Discrepancy.