セックスレスのカップルは別れる前に試せ!心に「Otherness」を持つ

セックスレスのカップルは別れるリスクが高いといえます。

なぜならセックスは関係の満足度に大きく影響するからです。しなくなると恋愛関係そのものに不満を感じやすくなるのです。

また恋人への性欲の低下が起こると、別れを検討する可能性が高いことも研究から分かっています。

こういったことに限らず、将来の家族計画を考えたときに、別れを選択することもあります。セックスレスのカップルが結婚を機に行為を再開する可能性は低いからです。

長年、付き合っていると性的興奮は冷めていくものです。研究によると、2年が経過したあたりから、相手に対する性欲は落ち始めるとされています。

ですからそういった環境の中で再びセックスをするのは難しいものです。

完全に諦めて別れることを考えているカップルもいます。しかし、セックスレスを理由に別れる前に試して欲しいことがあります。

親密さの中に「Otherness(他者性)」を持ち、自己拡張するということです。

何年も同じ相手に興奮し続けるのは自己拡張のおかげ

カップルで過ごす時間が増えるごとに性欲は低下するものですが、何年も付き合っているのにパートナーに対する性的興奮を維持し続けている人もいます。

この要因の一つが「自己拡張」です。

自己拡張とは新しい経験や視点を取り込み自分の世界観を拡げることです。

行ったことのない場所への旅行や、新しい趣味、出会ったことがないタイプの人と交流することなどでなされます。

自己拡張をする機会の多い人は性欲が高いことが複数の研究から判明しています。

またセックスがマンネリした場合にも自己拡張が有効とされています。

自己拡張させてくれた相手とセックスしたいと思う

人間は生まれながらに「自己拡張したい」という欲求を持っているといわれています。

そして誰かとカップルになるということはその手段の一つとなります。

相手のアイデンティティや見解、知識、経験を手に入れることが出来るからです。

そして自己拡張させてくれた相手に対し、興奮を覚えますから「セックスしたい」という気持ちにもなりやすいのです。

自己拡張の生理的興奮を性的興奮と勘違いすることもこうなる理由の一つとされています。旅行に行くとセックスしたくなるのはこの効果かもしれません。

しかし、物理的な刺激のない自己拡張であっても満足度と性欲が増すことが分かっています。

そして、長く一緒にいると相手のことはほとんど分かってきますから、ただ付き合っているだけでは自己拡張はなされなくなり、興奮もしなくなるということです。

親密さが自己拡張を促進するが、セックスレスの原因にもなる

恋人に対して親密さを感じることで自己拡張が促進されることも分かっています。

相手を近くに感じるほどに、相手の持っているものを自分の中に内包しやすいことが理由の一つです。

しかし、長期の関係の中で一貫して親密さを感じ続けることは性欲の低下とも関連しています。

家族のような感覚になってセックスする気になれないという人もいるでしょう。

そういった感覚がやがてセックスレスへとつながってしまうこともあります。

親密さは自己拡張を促進して性欲増進に貢献することもあれば、マンネリをもたらして性欲低下の原因となることもあるのです。

「Otherness(他者性)」とは

そこで試したいのが「Otherness(他者性)」なのです。

親密さのネガティブな効果を打ち消してくれる可能性があります。

他者性とは「パートナーの新しい一面を学び、お互いの関係に対する独自の貢献を評価するために必要な知覚的距離」と最近の研究では定義されることが多いです。

もっと分かりやすくいうなら、お互いが自律している感覚を持つための分離感です。(セックスレスになりやすい夫婦は自律性が合っていないともいわれています)

硬い絆で結ばれている関係の中で、独立性を維持することとも言い換えられます。

他者性を持つことでパートナーの新たな一面を知ることになりますから、停滞していた「付き合うことによる自己拡張」を促進してくれます。

他者性を持つことそのものが、カップルの性欲を高めレス解消につがることもあります。

すでに女として見られていない状態でも普段見せない表情を見せることで男性に性を意識させることも可能なのです。

(※他者性は目新しさや不確実な感覚とは異なるものですが、それらが他者性を促進することはあります)

親密さ、他者性、自己拡張、性欲の関係

ここまで説明したことをまとめると次のようになります。

  • 自己拡張には性欲を高める効果がある
  • 親密さと他者性は自己拡張を促進する
  • 親密さにはデメリットもあるが、他者性のメリットが上回る可能性がある
  • 他者性を持つこと自体がレス解消につながることがある

121組のカップルの報告

親密さと他者性、そして自己拡張の有効性はヨーク大学のソフィー・C・ゴスらの実験からも分かっています。

この実験では121組のカップルが21日間に渡り毎日、以下のことを報告しました。

  • 自己拡張するようなことがどれだけあったか
  • パートナーにどれくらいの親密さを感じたか(親密さ)
  • パートナーの新たな一面に気づくことがあったか(他者性)
  • パートナーにどれくらい性的欲求を持ったか(性欲)
  • どれくらい関係に満足しているか(満足度)

親密さと他者性は自己拡張を促進し性欲の増進に関連

カップルからの報告を分析したところ、自己拡張のレベルが高い日は、自分とパートナー両方の性欲も高いことが分かりました。

また、親密さと他者性が高い日は自己拡張のレベルも高いことが分かりました。

つまり親密さと他者性は自己拡張を促進し性欲の増進に関連しているということです。

これらの効果は満足度を制御したうえでも否定されませんでした。

つまり関係が良好なおかげで、親密さや性欲を高く評価するバイアスが掛かっているわけではないということです。

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2年以上付き合っている人たちの実験

さらにもう一つの実験がセックスレスのカップルに役立つ内容となっています。

こちらの実験ではパートナーと2年以上付き合っているという男女を319人集めました。

そして3つのグループに分け、それぞれ以下の条件に割り振りました。

  1. パートナーと自己拡張した体験を思い出す
  2. パートナーと慣れ親しんだ快適な体験をしたことを思い出す
  3. 何もしない

その後で、パートナーに対する、親密さ、他者性、性的欲望、満足度を確認しました。

体験を思い出すだけでも性的欲望が高まる

その結果、パートナーと自己拡張した体験を思い出したグループが最も高い性的欲望を報告しました。

さらに、親密さと他者性が自己拡張を促進していました。

ちなみにこの結果に付き合っている年数は影響していませんでした。

長年一緒にいる人ほどマンネリによってパートナーへの性欲が高まり難いということはなかったのです。

【関連記事】付き合って1年でレスになったとき、興奮を復活させるためにどうするか

セックスレスのカップルは特に「他者性」を!

今回、紹介した実験はある程度の性交がある人達が対象となっていました。

なのでセックスレスのカップルの参考にはならないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。

特に他者性を持つだけでもレス解消のきっかけとなることがあります。

私のところにセックスレスのカウンセリングに来ている人の中にも、他者性を持ちはじめたことで久々にセックスできるようになった人は複数います。

またリモートワークによって、普段は見ることがなかった新たな一面が見えたことで、性欲が沸いてきたという人達もいます。これも他者性が芽生えたからといえます。

実験でも証明されたように、自己拡張した体験を思い出すだけでも効果があるのです。ちなみに参加者が思い出していた時間は平均で3分53秒でした。

性と恋愛関係について研究しているエイミー・ムイーズ博士の研究でも、片方のパートナーが自己拡張すると、2人の性欲が高まることが分かっています。

あなたのパートナーが協力してくれなかったとしても、1人でできる方法なのです。

セックスレスで別れる前にぜひ、試してみましょう。

参考文献
・Sophie C. Goss, Stephanie Raposo, et al. (2022). Feeling Close and Seeing a Partner in a New Light: How Self-Expansion Is Associated With Sexual Desire.
・Muise A, Harasymchuk C, et al. (2019). Broadening your horizons: Self-expanding activities promote desire and satisfaction in established romantic relationships.

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