運動と性欲に関する研究は複数ありますが、概ねポジティブな効果が出ているものが多いです。
運動は性欲に関連するホルモンのテストステロンの増減に関係しますから、体を動かすことでセックスをしたいという気持ちにつながるのはおかしなことではないでしょう。
しかし全ての運動が性欲を増進させるわけではありません。強度によっては減退してしまうこともあります。
今回は運動が性欲に与える影響について研究をもとに解説します。
少しの運動でも性欲スイッチが入りやすくなる
運動によってテストステロンの分泌が増え、性欲アップにつながる研究は様々ありますが、刺激に対する生理的な反応のしやすさも変化するという研究があります。
つまり性欲スイッチの入りやすさも変わる可能性があるということです。
グリップを握っただけでも
ドイツのジーゲン大学のヨハネス・B・フィンケ博士らの研究グループが運動と性的刺激の関係についての実験を行っています。
この実験では、まず参加者たちに3分間、ハンドグリップを握らせるのですが、このとき自分の握力の10%の強度で握るグループと、45%の強度で握るグループに分けます。
その後でエッチなものから日常のもの、自然のものなど様々な種類の写真を見せました。
すると45%の強度で握ったグループはエッチな写真を見たときに心拍数や瞳孔のサイズの変化といった生理的な反応が大きくなったのです。
分かりやすくいえばエロい刺激に反応しやすくなったということです。
瞬間的なストレス反応が起こった
なぜこのような結果になったかというと、ストレス反応が引き起こされたからと考えられます。
慢性的なストレスは性欲を低下させることもありますが、瞬間的なストレスは性欲を高めるという研究もあります。(今回の実験は性欲ではなく反応性を高めたのですが)
つまりグリップを強めに握るという行動がストレス反応を起こし、性的な刺激に反応しやすくさせたということです。
ちなみにこの実験では他の自然の写真などを見ても反応は増強されませんでした。
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激しい運動は性欲を低下させる
運動が性欲の上昇と性欲スイッチの入りやすさに良い影響を与えることは分かりましたが、適度な強度で行う必要があります。
激しい運動は性欲を低下させる可能性があるのです。
高強度のトレーニングをしている人は性欲が低い
ノースカロライナ大学が18歳以上の健康な男性1,077人に運動と性行動についてのアンケートを行いました。
具体的には持久力トレーニングの強度と頻度、それとセックスのことを考えたり実際にセックスをする頻度を聞き取りました。
するとトレーニングと性欲には逆相関の関係があることが分かりました。
軽めから中程度のトレーニングをしている人は性欲が普通から高めの人が多かったのに対し、高強度のトレーニングをしている人は性欲が低い人が多いと分かったのです。
激しい運動はテストステロン値を下げる
なぜこのような結果になったかというと激しいトレーニングによって性欲に関係するホルモンのテストステロン値が下がってしまうからではないかと考えられます。
適度な運動は性欲を高めたり性機能を改善する効果があるという研究結果もありますが、やりすぎは逆効果となるのです。
フルマラソンを走った後の血中テストステロン値は大きく下がることが知られています。
一度大きく下がったテストステロンの分泌量が戻るまでには数ヶ月かかるともいわれており、その回復期間中にまた激しい運動をするとさらに分泌量が下がります。
マラソンや自転車は大人になってから始めても熱中する人はとことん熱中し、トレーニングだけではなく食事制限なども取り入れることがありますから、そういったことが性欲の低下につながる可能性も考えられます。
普段、全く運動をしていない人が健康維持や体力増進のために適度なトレーニングをすることは性欲にとってプラスの効果が期待できますが、やり過ぎには注意が必要です。
参考文献
・Johannes B. Finke, et al. (2022). Increased pupil and heart- rate responses to sexual stimuli in men after physical exertion.
・Hackney AC, et al. (2017). Endurance Exercise Training and Male Sexual Libido.