セックスレスの話し合いは無駄どころか逆効果!それでも向き合いたい人のためのステップ

レスの相談&カウンセリング
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セックスレスを解消するために夫婦での話し合いがおすすめされることがあります。

しかし私がセックスレスのカウンセリングをしてきた中で色々な事例を見聞きした経験から言わせてもらうと反対です。

なぜならセックスレスの話し合いは無駄な努力に終わるどころか、余計にレスを悪化させることのほうが多いからです。

そもそも話し合う前の段階で一人で出来るセックスレス解消の手段はいくつもあります。その中には相手にバレずにやることでいつの間にかムラムラさせることが出来るテクニックもあります。

それを試せるチャンスを捨てて最初から話し合いをしてしまうのは、キラーカードを1枚無駄にしているようなものです。

そこで今回はなぜ話し合いがダメなのかということと、それでも話し合いをしなければならない人のために、どのように話し合えば良いのかということを説明します。

話し合いをした時からセックスへの認識が大きく変化する

なぜセックスレスの話し合いをすべきでないかというと認識が変わってしまうからです。

どのように変わってしまうかというとセックスが「義務的にしなければならないもの」になってしまうのです。

妻とのセックスが義務的な仕事になる

あなたはセックスレスに陥っていると思っていても、夫はそのように思っていない可能性があります。

このような状態のときに話し合いを切り出されてしまったら夫は「そうか夫婦間に問題が生じているのか、これを解決するためにはセックスをしなければならないのだ」という認識を持ってしまうのです。

本来セックスというのは欲求によってする楽しいものなのに、嫌々しなければならない仕事のようなものになってしまうのです。

仮に夫側もセックスレス状態という認識を持っていたとしても、妻から話し合いを切り出された時点で「夫婦間にはセックスの問題がある」という認識が確定的なものになります。

こうなってしまうと「妻とのセックス」は義務的な仕事という認識が強まり、余計に妻に欲情しにくくなるのです。

セックスレスの話し合いをする前と後では解消できる確率が大きく変化すると思ってください。

カップルでカウンセリングに来た場合の解消率の方が低い

夫婦や恋人同士で一緒に受けられるカップルセラピーというものもあります。私のところもカップルセラピーという名前では行っていませんが、2人で一緒に相談に来られる方もいます。

しかし基本的には2人でカウンセリングに来ることはあまりおすすめしていません。

理由はここまで説明した通りです。「夫婦間に問題が生じている」という認識が強くなり逆効果になりかねないからです。

どちらからともなく「カウンセリングに行こう」と自然な流れで合意したのなら問題はありません。しかしそういったケースは稀でほとんどの場合はどちらか一方が強引に連れ出してきたというパターンが多いです。

このようなパターンで連れ出された方は「カウンセリングを受けなければならないほど深刻なの!?」となってしまい余計にセックスへのハードルが上がります。

また、カウンセラーという第三者が夫婦の寝室にまで入り込んでくる感覚を持って余計に萎えてしまうこともあります。

あくまで当カウンセリングルームのデータですが、2人で相談に来た場合のセックスレスの解消率は1人で来た場合よりも低いです。(もちろん夫婦間の問題の深刻度によっても違いますが)

話し合いによってセックスを再開した状態は危険

確かに話し合いによってセックスレスが解消することもあります。あなたも過去にうまくいったことがあるので再び同じようにしようと思っているのかもしれません。

しかし話し合いによってセックスを再開した状態は危険なのです。

夫は義務として嫌々セックスをしている可能性が高いからです。すると次にレス状態になったとき解消するのが困難になります。

なぜなら夫のセックスに対する満足度が大きく低下しているからです。

満足感があれば激しい性欲がなくてもセックスしたくなる

人間がセックスをする理由としては性欲がムラムラして抑えられないことの他に、セックスで満足感を得られるからということもあります。

同じ相手に対して永遠にムラムラし続けるのは難しいですからずっと一緒にいる夫婦がセックスレスにならないためには満足感を得ることが必要です。

この満足感には性的な気持ち良さや愛情を感じること、パートナーを喜ばせることができたという感覚などが含まれます。

こういった感覚を得ることが出来ていれば激しい性欲がなかったとしてもセックスをしたいという気持ちになれます。

嫌々していると妻とのセックスが不満になる

これらの満足感を得るために必要な要素の一つとして「コントロールできている」という感覚が挙げられます。

これはプレイそのものの主導権を握っているということではありません。自分の意思によってセックスするかどうかを決められているかということです。

セックスレスを解消するための義務的なセックスでは満足感を得られないということです。

ヨーク大学の研究者らが200組以上のカップルを分析した結果でもプレッシャーや義務感からセックスをする人の性的満足度は低いことが判明しています。

つまり「妻がセックスレスは良くないと言っているから仕方ない…」と嫌々にセックスをしている夫は満足度が下がり妻とのセックスへの嫌悪感がますます強まるのです。

話し合いによってセックスレスが解消したとしてもそれは一時的なものであり、再びセックスレスになったときの危険性を高めているだけということもあるのです。

セックスレスの話し合いのステップ

ここまでセックスレス解消のために話し合いをすることのリスクについて色々と説明してきましたが、それでも最終的には話し合いをしなければならないこともあります。

そんなときにより建設的に話し合いをするための方法を説明します。感情的にならないようにするためにもこのステップを頭の片隅に置いて話し合うと良いと思います。

海外のカップルセラピーでも用いられることの多い感情焦点化療法(EFT: Emotionally Focused Therapy)というものがあります。感情や体験に注目した心理療法でうつ病の改善などにも利用されています。

これをカップル間の性的欲求の不一致(Sexual Desire Discrepancy)の改善に用いた研究があるのでそれを参考にステップを説明します。

注意

感情焦点化療法は本来はカウンセラーのもとでやるものですから話し合いの流れの参考程度に考えてもらえればと思います。(また当カウンセリングルームでは感情焦点化療法は行っておりません)

1.セックスレスの現状を把握する

まずは2人の間にあるセックスレスの問題がどのようなものか把握します。

全くセックスをしていないのか?しなくなってしまうタイミングやパターンがあるのかを特定します。性欲の不一致がどの程度起こっているのかも確認します。

また、それぞれがセックスに対する嫌悪感や肉体的な痛みがあるのか、性欲が気持ち悪いと思っているのか、過去の人間関係や生育環境でのトラウマが影響してないかも確認します。

2.負のサイクルを特定する

セックスレスになっていることに対してそれぞれがどう思っているのか伝えます。

自分から誘って断られたとき、反対に気分の乗らないときに相手から誘われたときにどんな気持ちになっているか具体的に言葉にします。

セックスレスと感情は相互作用があります。負の感情を持つことで愛着が薄れセックスしなくなり、それによりさらに負の感情が強くなるといったサイクルがないか確認しましょう。

3.認識していない感情や欲求へのアクセス

認識していない愛着の問題がセックスレスの原因となっていることもあります。

拒絶されることや見捨てられることへの不安や恐怖はないか?それによって依存もしくは回避が起こっていないか確認します。

また性欲が高い又は低いことで自分がおかしいと感じていないか?ということも確認します。

性欲は人によって違うだけではなく変化するものということを理解していることが性的満足度につながるという研究結果も多くあります。

4.問題を捉え直す

ここまで話し合った内容をもとにセックスレスの問題を間違って認識していなかったか確かめてみましょう。

一方の性欲の強さや弱さだけに問題があると考えているパターンはよくあります。そこだけにフォーカスしてもセックスレスは解消しません。

お互いに執着しずぎたり逆に遠慮しすぎたりしていたことが精神的負担になりセックスを遠ざけていなかったでしょうか?

負の感情のサイクルと愛着の問題として捉え直すことで解決の糸口が見つかることもあります。

5.お互いのニーズを共有する

お互いが求めていることを正直に伝え合います。

もっと愛情表現をしてほしい、不安を感じたときに安心できるような話をしてほしい、理解してほしいなどです。もちろんセックスの回数を増やしたいということでも良いです。

聞かされた側はそれを全て受け入れる必要はありません。自分がどうしたいのか伝えることと相手のニーズを知ることが大切なのです。

6.解決のための行動目標を決める

セックスレス解消に向けてできる具体的な行動目標を決めます。ハグやキスから始めてみるのでも良いですし、マッサージをするのでも良いです。

お互いが負担に感じない内容であることが大切です。やらなければいけない義務と感じてしまうと負担が大きくなるのでますますセックスレスが加速する可能性があります。

感謝を言葉にして伝えるといったことからでも良いのです。

注意

以上が話し合いのステップとなりますが、感情焦点化療法は暴力、薬物乱用、不倫などの問題があるときには忌避とされています。

また冒頭でも説明した通り本来はカウンセラーと一緒にやるものですから話し合いをするときの参考程度に頭の片隅に置いておくだけでも良いと思います。

もしくはなぜ夫が拒否するのかその理由を探るための参考のリストとして使っても良いかもしれません。

それから感情焦点化療法を性欲の不一致に応用する今回の方法は主に愛着関係に焦点を当てた部分が多いです。そのためセックスレスの原因によっては効果が期待できないこともあります。

しかし性欲の不一致を引き起こすサイクルを知ることは苦痛や葛藤を軽減する効果があることが研究からも分かっています。

話し合いで涙を見せてはいけない

話し合いについてもう一つだけアドバイスがあります。

セックスレスというのは非常に辛いものですから、話し合いを切り出して言語化しているうちに感情があふれ出て泣いてしまうこともあると思います。

こればかりは仕方のないことなのですが出来れば涙は見せないほうが良いです。

ワイツマン科学研究所の実験によると女性の涙の匂いを嗅がされた男性は女性の顔の魅力を低く評価することが分かっているのです。

それだけではなく性欲に関連するホルモンのテストステロンが13%も減少することも分かりました。

さらにMRIで男性の脳を確認したところ性的活動に関連する部位の働きまで低下していたのです。

「涙は女の武器」などと言われていますが性科学的には逆効果なのです。

それに男性側からすると泣きながら感情的に話されると引いてしまうこともあります。

当然ですが「なんでセックスしないのよ!」と感情的に怒りをぶつけるのもやめましょう。

レスの話し合いをする前にできることはある

何度も説明している通りですが初期段階において話し合いは悪手となります。

意識や行動を変える、見た目を変えるなど妻側が一人でできるレスの解消法は複数あります。

まずは「セックスレスを解消しようとしているのかな?」と夫に気づかれずにできることから始めましょう。

夫に「自分の意思でセックスをした」という意識を持たせることが必要なのです。

話し合いの末に何とかセックスができたからといってそれが必ずしも良い方向に向かっているとは限らないのです。

参考文献
・Ariel Shoikhedbrod, Natalie O. Rosenb, et al. (2022). Being Responsive and Self-Determined When it Comes to Sex: How and Why Sexual Motivation is Associated with Satisfaction and Desire in Romantic Relationships.
・Abby Girard, Scott R Woolley. (2017). Using Emotionally Focused Therapy to Treat Sexual Desire Discrepancy in Couples.
・Shani Gelstein, Yssra Yeshiurun, et al. (2011). Human Tears Contain a Chemosignal.