夜の営みが減ったり、そうなる心配をしている人から相談を受けることもあります。
そんなときに、夫婦の夜のルールを決めたほうが良いかと聞かれることがあります。
「毎週金曜日はエッチする」などと決めるべきかということです。
これに関してはあまりオススメしません。
「自分たち夫婦はルール化したほうが上手くやっていけるタイプ」というなら良いのですが、そうでないなら余計に夫婦生活の頻度が減ってしまう可能性があります。
ルールとして決めた時点で義務と認識してしまう
夫婦の夜のルールを決めると最初はそれを守れると思います。毎週決まった曜日にセックスできるでしょう。
しかし、それは運用が上手くいっているということではありません。
勢いや新鮮さがあるおかげで悪影響を受けずに済んでいる状態と見た方が良いでしょう。
気づいていないだけで、ルールとして決めた時点で夫婦の営みが「しなければならない義務」となっているのです。
そのため、夫婦のセックスが楽しいという感覚が消失するのが早くなります。
本来であれば本能的な欲求によって行うことを、ルール化するとつまらないものになってしまいます。
大好物でも毎週決められた日に「絶対に食べなければならない」と言われれば、価値が下がったような気がするのと同じです。
毎週やって来るのは燃える情熱ではなく、燃えるゴミの日
子作りのためと割り切っているなら、計画を決めて、その日にしても良いでしょう。
計画的なセックスが、自然な流れでするセックスに劣るとは限らないという研究もあります。
「特別な日」と楽しむマインドを持てれば、良いセックスができます。
しかし、これも月に1回程度だったり、ご無沙汰気味なので二人で予定を合わせようという意思で行っているから、楽しめているといえます。
「毎週何曜日はエッチする」と決めてしまうと、まるで面倒なゴミ出しの日と同じになってしまいます。(参考:セックスする日を決めることの危険性!余計にしなくなってしまう)
人間が同じ相手に持つ性欲は年月とともに変化します。たいていは興奮によってのみのセックスが難しくなってきます。
そこを考慮せずに夫婦のルールを決めてしまうと、それが大きな負担となってしまうのです。
燃えるゴミの日は何年経っても毎週やって来ますが、夫婦の燃える情熱は毎週やって来ることはなくなるのです。
また、加齢によって性機能に変化が生じることもあります。
おすすめの夫婦の夜のルール
時間の経過とともに変化する夫婦の「性」に対応するために、おすすめのルールがあります。
それは「変化に合わせてセックスのスタイルも成長させていける」という信念を共有することです。
このような信念を「性的成長信念」といいます。
「体の相性が悪い夫婦はビリーフを変えて改善しましょう」の記事で説明しましたが、性的成長信念を持つ人はセックスの満足度が高いことが分かっているのです。
さらに、ラトガース大学などの研究チームの調査によると、性的成長信念がカップルの双方に良い影響を与えることも判明しています。
つまりパートナーの満足度を高めることもできるということです。
「性的成長信念」が「性的拒絶感受性」を低下させてくれる
「性的成長信念」にはもう一つ重要なメリットがあります。
それはセックスレスの原因となり得る「性的拒絶感受性」を低下させられることです。
性的拒絶感受性とは、断られることをどれくらい心配したり、気にするかという程度のことです。
性的拒絶感受性が高い人は、セックスに誘っても断られるだろう、こんなプレイを提案しても受け入れてくれないだろう、と思いやすいのです。
何度もこのような思いを持つと、やがて誘うことさえ億劫となり、セックスレスにつながってしまうこともあるのです。
性的拒絶感受性は生まれ持ったものや、夫婦の性体験の影響を受けるものですが、性的成長信念を持っていると、低くなることが分かっています。
この効果は本人が持っていても、パートナーが持っていても得られます。
「運命の相手」という信念を変化させる
「運命の相手」という考えは男女関係ではマイナスとなることが多いです。
どこかに運命の相手がいると信じている人は、恋人と上手くいかなくなると「この人は運命の人じゃなかった」と考え、急に音信普通にする可能性が高いという研究もあります。
二人で向き合うことで変化に対応できるという考えを持ちにくいのです。
実は性的成長信念を持っていない人は、性を運命的なものと考える傾向があります。
「人間の性的スタイルは固定化されているので変化しない」と考えるのです。
そして、セックスのタイミングや興奮レベルが合わなくなったとき、「自分たちは相性が悪かったのだ」と判断してしまうため、改善できるという希望を持ちにくいのです。
こういった信念を柔軟に変化させるためにも、夫婦の夜のルールを作るなら「変化に合わせてセックスのスタイルも成長させていける」という信念を忘れないこと、としたら良いと思います。
もう一つ付け足すなら、「プレイの提案を非難しない」というルールです。
たとえ自分が嫌なプレイであったとしても、オープンに伝えてくれたことは嬉しいというメッセージを伝えましょう。
また、夫婦の夜のルールを決めるべきでないといっても、「妻の生理中は性的な接触をしない」などの、禁欲ルールはメリットをもたらすこともありますので、適度に取り入れても良いと思います。
参考文献:Cultice, R. A., Sanchez, D. T., & Albuja, A. F. (2022). Sexual growth mindsets and rejection sensitivity in sexual satisfaction. Journal of Social and Personal Relationships, 39(4), 1131-1153.