親の性行為(セックス)を見たらトラウマになるのか?ソシオセクシャリティは高まる

子供時代に親の性行為を見てしまった記憶が鮮明に残っているという人もいます。

夫婦の営みを子供に見られてしまったという人もいます。

こういった人たちの中には、それがトラウマとなり、悪影響を及ぼすのではないかと不安になる人もいると思います。

今回は親の性行為を見ることの影響について研究を基に解説します。

親の性行為を暴行場面と認識する子としない子

親の性行為を見ることがトラウマにつながると最初に言ったのは、精神分析医のジークムント・フロイトです。

フロイトは子供が親の性行為を見ることを「Primal Scene(原初場面)」と名付けました。

原初場面をもう少し詳しくいうと、暴行として解釈される親の性行為の光景です。それを見たときに意味は理解できずに、謎のままではあるものの、性的興奮を喚起するものとされています。

それらの体験が混乱をもたらしトラウマになるとフロイトは主張しました。

実際にフロイトの患者で、抑うつ傾向や恐怖症、悪夢を繰り返し見るといった症状が出ている人の中には、原初場面に遭遇していた人もいたのです。

しかし、その後の研究によって、親の性行為を見ることが必ずしも、トラウマにはつながらないことが分かってきました。

そもそも親の性行為が全て暴行の場面と認識されるわけではないのだと後年の研究者らは主張しています。

認識のされ方は日常の親子関係に影響されるのです。親が子供に威圧的に接していれば暴行と認識する可能性が高まりますが、そうでなければ必ずしもトラウマ体験とはなりません。

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親の性行為を見てもトラウマにはつながらない

UCLAの研究者らが、親の性行為を見ることが子供にどのような影響を与えるのか調べたデータがあります。

約200人の男女を生後から18歳まで長年に渡り調べたものです。

このデータによると全体の32%にあたる63人が、親の性行為を目撃していることが分かりました。

また、性行為でなくとも親の裸を見た経験については、頻繁に見たのが61人(31%)、ときどき見たのが86 (44%)となっています。

子供時代のこれらの体験がどのような影響を与えたのでしょう?

まず親の性行為を目撃した男性は性病のリスクと女性を妊娠させるリスクが低いことが分かっています。

女性は逆に、性病と妊娠のリスクは高くなっていました。

親の裸を見たケースでは男女ともに思春期にセックスをする可能性が低い傾向にありました。

トラウマという点ではどうでしょうか?

トラウマという名目ではデータを取っていませんが、親の性行為を目撃した人の方が若干、自己受容のレベルが高いことが分かっています。

つまり、親の性行為を見たことが、その後のメンタルに有害な影響を与える主要な効果は見られないということです。

それどころか、窃盗や薬物使用などの反社会的行動に関わる可能性が低い傾向さえありました。

フロイトのもう一つの主張

フロイトの主張はやはり間違っていたようです。

実はフロイトは親の性行為を目撃したことの影響について、成人後に異性と短期の関係を持ちやすくなるとも言っていました。

性的な事柄に対する多くの混乱が生じることで、不健康で衝動的な関係を持ちやすくなるからということです。

果たしてどうなのでしょうか?

親の性行為を見るとソシオセクシャリティが高まる

恋人や配偶者以外の相手とのセックスを快適に感じる程度のことを「ソシオセクシャリティ」と言います。ソシオセクシャリティが高い人は性的に奔放ということです。

ノース・テキサス大学の研究者らが、親の性行為を見た体験とソシオセクシャリティの関係を調べています。

まず、18歳から30歳までの961人の男女に「子供の頃、両親が性行為をしているのを見たことがありますか?」と質問しました。

それと、「過去12ヵ月間で何人と肉体関係を持ったか」「愛情ナシのセックスは許容できるか」といった、ソシオセクシャリティを測定するための質問をしました。

これらの回答を分析したところ、子供時代に親の性行為を見たことのある人ほど、ソシオセクシャリティが高いことが分かりました。

また、別の18歳から30歳までの男女1390人に対する聞き取りでは、何歳のときに親の性行為を見たかも確認していますが、平均は8.62歳でした。

さらに、それについて親と直接対話をしたのは全体の21.81%でした。

こちらのデータでは親の性行為を見た女性より男性のほうがソシオセクシャリティが高いことも分かっています。

以上の調査結果を踏まえると、原初場面に遭遇したことによる性的な混乱が成人後の衝動的な性行動につながっている可能性はあるのかもしれません。

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トラウマになる人もいる

もちろん、ソシオセクシャリティは様々な要因によって変化するものですから、必ずしも原初場面への遭遇が原因とはいえません。

それと、今回の研究では否定されていますが、フロイトが主張するように、親の性行為を見たことがトラウマとなり、うつ病や恐怖症につながる人もいるでしょう。

また、子供の目の前でもかまわずに性行為をする親もいます。虐待の一種ですから、それがトラウマとなることもあります。

そもそもこういう親は他のことでも子供に酷い扱いをしますから、自己肯定感が下がって、メンタルを病みやすくなることもあります。

全ての問題を原初場面に結び付けないように注意が必要です。

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<参考文献>
・Paul Okami, Richard Olmstead, et al. (1998). Early childhood exposure to parental nudity and scenes of parental sexuality (‘primal scenes’): an 18-year longitudinal study of outcome.
・Michael D. Barnett, Katherine E. Berry, et al. (2017). The Primal Scene Phenomenon: Witnessing Parental Sexual Activity and Sociosexual Orientation.

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