もしあなたが夫とのセックスの頻度が少ないことに悩んでいたとして、あなたに依存傾向があるならそれを治したほうが良いかもしれません。
セックスレスになりやすい夫婦の特徴を一つ挙げるなら自律性のレベルが合っていないことです。
研究でもお互いの自律性に差がある夫婦は性的欲求が低い傾向にあることが分かっています。
反対に同じレベルで自律性を持っている夫婦は性的欲求が高いということも分かっています。
自律性と依存
自律性とはその名の通り自分をコントロールする力のことです。自分で考えて解決できる能力と言い換えることもできます。
依存気質のある人はこれが低い傾向にあります。自己と他者の切り離しが上手くできていないからです。
不安や悩みが生じたときにその負担を相手にも共有してほしいという欲求も強いのです。
1人でいるときは大丈夫なのにパートナーが出来たら途端にダメになってしまうという人もいます。
そしてどちらかがこのような特徴を持つ夫婦はセックスレスになりやすいといえます。
性欲の強さと自律性の関係
リスボン大学が夫婦(カップル)を対象に自律性(自己分化)と性的欲求の強さについて調査を行いました。
それによるとお互いの自律性のレベルが似ている夫婦は性欲が強い傾向にあることが分かったのです。
反対に自律性のレベルに大きな差がある夫婦は性欲が弱いことも分かりました。
つまりどちらか一方が過度に依存しているか反対に過度に自律していると性欲は弱くなるということです。
☑︎妻が好きすぎて抱けない夫はマドンナ・ホア・コンプレックスかもしれない
自律性を高めることでセックスレスが解消するケースは多い
別の研究ではセックスレスのカップルが他者性を意識して自律性を高めると性欲の増進につながるということが分かっています。
しかし、今回紹介した研究は自律性の高さが性的欲求の強さに関係しているといっているわけではありません。
お互いに同じレベルの自律性を持っている夫婦は強い性的欲求と関連しているという話です。しかもそれが因果関係なのか相関関係なのかは確定できないとされています。
とはいえセックスレスの相談を受けている中で思うのはお互いが良い意味で切り離しが出来ている夫婦のほうが倦怠感を覚え難いのかなということです。
「自分のこと」と「相手のこと」という境界が明確なことで長年一緒にいてもお互いに新たな発見があるので新鮮さを維持できるのかもしれません。
当カウンセリングルームは妻側(彼女側)が単独で相談に来るケースがほとんどなのですが、妻だけが自律性を高めることでセックスレスが解消するというケースも意外と多いです。
自己分化を上手に行うことで自律性が高まると醸し出す雰囲気が変化するため、旦那に与える印象も変わり、無意識に新鮮さを感じさせることが出来ることが理由だと思います。
また、自分が拒否する側だったとしても、自己分化によって適度な境界が蘇り興奮しやすくなるともいえます。
それでもセックスレスなのはなぜか?
そのため適度な距離感を持つことの大切さを説明することが多いのですが、中には「私たち夫婦はお互いに自律性が高いのにほぼセックスレスです」という女性もいます。
このように自律性のレベルが高いと自認している夫婦は大きな落とし穴にハマっている可能性があります。
それは単に冷めているだけの状態になっているということです。
これはセックスレス解消のために自律性を高めようとする人もついやらかしてしまうことなのですが、適度な距離を持つというのは割り切った関係になるということではないのです。
相手のことを思いやり、感謝の気持ちを持った状態で尊重するということなのです。
セックスレスの解消に感謝の気持ちが重要な理由
夫婦の営みの維持やセックスレスの解消には感謝の気持ちが非常に重要です。
なぜなら感謝によってセックスの誘いに応じやすくなるからです。これは研究からも分かっていることです。
セックスに応じたい気持ち(SCS)
パートナーの性的ニーズに応えようとする動機づけの程度のことを「SCS(Sexual Communal Strength)」と呼びます。
セックスの誘いにどれくらい応えたいと思うかの指標と言い換えることもできます。
夫婦の双方が高いSCSを持つことは関係を維持するうえでもセックスレスを防止するうえでも重要です。
感謝がSCSを高める
このSCSが感謝の気持ちとどのように関係するかを調べたノースカロライナ大学の実験があります。
実験では参加者に最近の出来事について記述してもらったのですがグループごとに以下の条件が割り当てられました。
- パートナーに感謝の気持ちを持ったときのことについて書く
- パートナーから感謝の気持ちを表現されたときのことについて書く
- 自分が体験した楽しかった出来事を書く
その後にさきほど説明したSCSの程度を調べるアンケートにも回答してもらいました。
するとパートナーに感謝の気持ちを持ったときのことについて書いたグループと、感謝の気持ちを表現されたときのことについて書いたグループの人はSCSが高まることが分かったのです。
感謝の気持ちがパートナーの価値を再認識させる
感謝の気持ちは相手の価値を再認識させその関係を維持する動機を高める働きがあるとされています。
感謝を表現することでパートナーとの関係を維持しようとするモチベーションも高まります。
それが相手の性的ニーズに応えようという欲求にもつながるのです。
感謝を受け取るとやりがいが生まれる
人は感謝の表現を受け取ることでその体験にやりがいを感じます。人はやりがいを作ってくれる相手を好きになる傾向があります。
すると相手が重要と考えているであろうニーズを満たしてあげたいという欲求も高まるのです。当然セックスの誘いというのは相手にとって重要なニーズです。
つまり感謝の気持ちを伝えることも受け取ることも相手からのセックスの誘いに応じようという欲求を高めてくれるということです。
セックスレスを解消するには感謝の気持ちを持ちながら自律性を高めることが大切なのです。
逆にこれがない夫婦は今は大丈夫でも将来的にはセックスレスになるリスクが高いということです。
参考文献
・Partners’ Similarity in Differentiation of Self is Associated With Higher Sexual Desire: A Quantitative Dyadic Study.
・Gratitude Increases the Motivation to Fulfill a Partner’s Sexual Needs.