セックスに対するプレッシャーがレスの原因となっていることもあります。
このプレッシャーを生み出す要因の一つはオーガズムへの義務感です。
これを無くすことで、セックスへのハードルを下げることができます。
そのための方法を説明します。
前戯を開始すれば最後までセックスできる理由
レス気味のカップルでも服を脱いで前戯を開始すれば最後までセックスを完遂するでしょう。
前戯の途中でやる気が消失するというパターンは少ないと思います。
これは脳の興奮が生じるからです。面倒に思っていたことでも行動を始めると興奮によりモチベーションや集中力が沸いてくるのです。
これは性的なことに限った話ではありません。
例えば皿洗いを考えてみましょう。
シンクに何枚もの皿が溜まっているとき、なかなか作業に取り掛かる気にはなれません。疲れていれば尚更です。
しかし1枚洗うと、そのまま全ての皿を洗い終えることができるはずです。
このような現象は皮膚や視界から刺激を受けることで、脳からやる気をもたらす神経伝達物質が分泌されるために起こると考えられています。
「イカなければ」という義務感もプレッシャーを生じさせる
セックスを面倒な作業と言ってしまうのはいかがなものかとは思いますが…
レス状態のカップルのどちらかにとってはそのような認識になってしまっていることが多いです。
ですからまずは初めの一歩を踏み出すことが大切なのですが、それが出来ないからレスになっているわけです。
なので初めの一歩を軽くしなければなりません。
そのためにはオーガズムに対する義務感を払拭し、セックスに対するプレッシャーを取り除く必要があります。
「自分はイカなくても満足だし、それを相手にも伝えているけど…」という人もいるでしょう。
しかし、それだけでは不十分なのです。
「相手をイカせなければ」という義務感だけではなく、「自分がイカなければ」という義務感もセックスのプレッシャーを生じさせているのです。
セントラルフロリダ大学のサラ・B・チャドウィック博士らの研究でも、オーガズムへの義務感がセックスの満足度に悪影響を及ぼすことが判明しています。
また「相手の機嫌を悪くしないためにセックスに応じなければ」というネガティブな動機を持ちやすくなることにもつながります。
「セックスレスにならない夫婦の思考パターンが判明」の記事で説明した回避型の動機ということです。
イカないセックス!裸で抱き合うだけでも良い
イカなければならないという義務感を持っていると、セックスに対して時間と体力を消耗する大変な作業という認識を持ってしまいます。
誘いのサインを感じ取っただけで、プレッシャーを感じるでしょう。
皿洗いでいうならシンクの中に大量の皿が積み上げられている状態なのです。
この状態を打破するために、イカないセックスを取り入れるのです。裸で抱き合うだけで終わらせても良いのです。
それによって、セックスに対する労力の掛かる作業という認識は薄れていきますからプレッシャーを感じにくくなります。
抱き合うだけのつもりでも、行動に移すことで最後までやる気になることもあるのです。
性的な希望を伝え合えるカップルは関係への満足度が高い
大量の皿を洗わなければならない状況でも、それがシンクの中にあるのか、食洗器の中にあるのかで初めの一歩の重さは変わってきます。
後者であればボタンを押すだけですから気軽です。
セックスも同じことです。
大切なことは気分が乗らないときは「裸で抱き合うだけでも良い?」と言いやすい状況をつくることです。
このときあなたが落ち込んだり、悲しそうな表情をしてはいけません。
それがプレッシャーになってしまうからです。
「したい」「したくない」ということを含め、性的な希望を配慮しながら伝え合えるカップルは関係への満足度が高いことも分かっています。
とはいえ、いきなりセックスレスの話し合いをしてしまうと逆効果となりますから注意しましょう。
参考文献:Chadwick, S. B., Grower, P., & van Anders, S. M. (2022). Coercive Sexual Experiences that Include Orgasm Predict Negative Psychological, Relationship, and Sexual Outcomes. Journal of Interpersonal Violence, 37(23-24), NP22199-NP22225.