人間は馴染みのある顔を好みます。「単純接触効果」といって何度も会っていると好きになることもあります。
なぜこのような現象が起こるかというと、人間は自分の脳内にある平均顔と近いものが好きだからという説があります。
私たちは脳内に大勢のサンプルから作成した平均顔のイメージを持っているのです。そしてその顔と近いものほど認識するのが楽になります。
脳は楽なものは良いものと判断しますから、平均顔を好きになります。
何度も会っていると、その人の顔データを頻繁に取り込みますから、脳内の平均顔のイメージがその相手に近づきます。そして好きになるということです。
初めて見る顔のほうが魅力的なとき
しかし、状況によっては新しい顔のほうが魅力的に見えることもあります。
特に動物のオスは交尾をするときに新しい相手を好みます。
ドブネズミのオスを同じメスと一緒にしておくと、交尾をしますが1時間ちょっとで飽きてやめてしまいます。
しかし定期的に新しいメスを入れると、8時間近く交尾し続けるのです。
このような現象を「クーリッジ効果」といいます。人間の男性でも発生する効果です。
なぜ男性は新しい相手と性交したがるのか?
なぜ男性は新しい相手と性交したがるのでしょうか?
それには男女の交配戦略の違いが関係しています。
女性は出産できる数に限度がありますし、妊娠期間も長いです。その間に自分を守り、食べさせてくれる男性でなければ安心できません。
出会ったばかりのどこの誰か分からない男性より、慣れ親しんだ男性のほうがヤリ逃げするリスクも低いですから、肉体関係を結ぶ相手としてはそちらを好むのです。
それに対して男性は子孫を残すためのコストが小さいです。射精して終わりです。
ですから出来るだけ多くの子孫を残したいと考えるとされています。
また、環境が変化しても自分の子孫が生き残り続けるためには、様々なタイプの遺伝子を残すことが有効な戦略となります。
そのため、常に新しい相手との遺伝子の掛け合わせを求めているということです。
男性は2回目に見る顔を低評価する
スターリング大学とグラスゴー大学の研究者たちが、他者の顔を評価するとき男女で差が出るのか実験で調べています。
この実験では148人の男女に、男女5人ずつ合計10人の顔写真をランダムに見せて、魅力を評価させました。
その後で新たな10人分の男女の顔写真を追加して、先の10人分と合わせてランダムに見せ、魅力を評価させました。
それぞれの評価を比べたところ、同じ顔写真は2回目に見せられたときのほうが、魅力を高く評価することが分かりました。単純接触効果が発生したということです。
しかし、男性が女性の顔写真を評価したときだけは、2回目に見たときのほうが低評価となりました。慣れによって価値を低く見積もったということです。
セクシーさも低評価
別の参加者でも同様の実験を行いました。
今度は交際する相手として魅力的かということを評価しました。(異性の写真のみ評価)
評価する交際パターンは2種類あります。
ワンナイトや浮気相手のような短期間の相手としての評価と、結婚相手や同性相手のような長期間の相手としての評価です。
結果は男女で異なりました。
女性は短期・長期ともに同じ顔を2回目に見たときのほうが高く評価しました。
男性は2回目の方が低く評価しました。特に短期の交際相手としての評価は2回目に見たときで大きく落としました。
さらに別の参加者で、信頼性とセクシーさの評価もしています。
信頼性については男女ともに同じ顔を2回目に見たときの評価が高くなりました。
セクシーさは、女性が2回目を高く評価したのに対し、男性は低く評価しました。
恋人や元恋人と似ている人を評価するのか?
また別の参加者で、現在の恋人と、元恋人とどれくらい似ているかという比較もしながら、顔写真を評価させました。
男女ともに恋人や元恋人と似ている人を評価する傾向がありました。
しかし、男性は女性ほどに、似ている人を評価しませんでした。特に現在の恋人と似ている人の評価はそれほど大きくなりませんでした。
男性は頻繁に見ているものや、それと似たものは例え自分のタイプのものであっても、高評価しないということです。
参考文献:Little AC, DeBruine LM, Jones BC. Sex differences in attraction to familiar and unfamiliar opposite-sex faces: men prefer novelty and women prefer familiarity. Arch Sex Behav. 2014 Jul;43(5):973-81.