当方にセックスレスの相談にいらっしゃる方は圧倒的に女性が多いので女性向けの記事が多くなっているのですが、今回は久々に男性視点での記事となります。
セックスレスになると精神的にキツくなるのは男性も同じです。
「妻から拒否される度に全人格を否定されたようで辛い気持ちになるんです」と涙ながらに語ってくれるのは一人や二人ではありません。
妻側の拒否によってセックスレスになる原因は複数ありますが、見落としがちなものの中でも、重要なのが無意識に与えている嫌悪感です。
後述しますが、無意識の嫌悪感がセックスに影響を与えることは研究でも判明しています。
悪気なくしている言動が妻を不快な気分にさせ、それが積み重なり嫌悪感を抱かれて拒否されるのです。
厄介なことに、妻側もなぜセックスしたくないと思ってしまうのか分かっていないこともあります。
嫌悪感をなくしてもらうことは、セックスレス解消の施策を行う以前の問題ですから、ぜひ自分自身の言動を振り返ってみてください。
妻側の拒否につながる行動
妻に拒否されて辛いという感覚を持つくらいですから、意図的に攻撃する態度を取っている人はいないと思います。
しかし、自分でも気づかずにしている言動が妻を不快にしていることは往々にしてあります。
例えば次のようなことをしていないでしょうか?
- 妻に話しかけられたときスマホを見ながら返答する
- D言葉(でも、だって、どうせ等の否定的な言葉)を頻繁につかう
- 妻は自分より頭が悪いという前提で会話する
- 妻が家事や育児で動き回っているときソファでのんびりしている
- 洗濯物や汚れた食器を放置する
- 頼まれごとをされたとき嫌そうな表情をする
上記はほんの一例です。他にも食べ方が下品なことや、ドアの開閉音がうるさい、身だしなみが汚いなど本能的に不快感を与える行動はたくさんあります。
悪気なくやっているこれらの行動が積み重なると、妻の脳に「夫=不快」というデータがインプットされます。
セックスは快感を求める行為ですから、不快な原因である夫としたい気分にならないのは当然なのです。
無意識の嫌悪感はセックスレスの大きな要因
「夫とセックスしたい気分になれない」と相談に来る女性の話を聞いていても、上記の言動により嫌悪感を抱いているケースは多いです。
日常の細々とした出来事の積み重ねがセックスの拒否につながっているのです。
急にセックスレスになることはなくとも、少しずつ頻度が減っていくのです。このとき妻の中では既に嫌悪感が強まり始めています。
相談に来ている男性に無意識の嫌悪感のせいで妻が拒否しているという説明をしても、あまり納得してくれないことがあります。
「そんなフワッとした原因のはずないでしょう」と腹落ちしないのです。
しかし多くの相談を受けている経験から言わせてもらえば、無意識の嫌悪感はセックスレスの大きな要因です。少なくともセックスの回数は減少させます。
脳のモードと判断のスピード
少し話が逸れますが、人間の脳にはモードがあります。
例えば「好きなことを考えているモード」「嫌いなことを考えているモード」です。
そしてこのモードは判断のスピードにも影響します。
チョコが好きな人がいたとします。
この人がチョコについて考えているとき、「美味しい」という単語を見せられると、それがポジティブな意味を持つ単語であるとすぐに判断できます。
脳が「好きなことを考えているモード」になっているため、ポジティブなものを判断しやすい状態になっているからです。
逆に「不味い」という単語を見せられたときは、それがネガティブな意味を持つ単語だと認識するのには時間が掛かります。
この脳の仕組みを利用することで、本当に好きなものと嫌いなものを調べることができます。
無意識の嫌悪感も判断できます。
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配偶者のことが好きか嫌いか分かる実験
フロリダ州立大学のリンゼイ・ヒックス博士らが、100組以上の夫婦を集めて面白い実験を行っています。
手順を簡単に説明すると以下の通りです。
- パソコン画面に写真がランダムに表示される(配偶者の写真も含まれる)
- 写真が消えるとすぐに単語が表示される
- 参加者はその単語がポジティブな意味かネガティブな意味かボタンを押して素早く答える
- 1~3の手順を複数回繰り返す
この実験では単語の意味を判断するまでの時間を計測しています。
ここから何が分かるかといえば、表示された写真に対して無意識にどう思っているか?です。
例えば配偶者の写真が表示された後に「ポジティブな意味の単語を判断する時間」よりも「ネガティブな意味の単語の意味を判断する時間」のほうが速ければ、配偶者のことが嫌いということです。
なぜなら脳が「嫌いなことを考えているモード」になっていたということだからです。
妻から拒否されて辛いという男性がまずするべきこと
今回の実験では参加者にセックスの頻度も聞き取っています。
それらのデータを分析したところ、配偶者の写真が表示された後に「嫌いなことを考えているモード」になっていた参加者ほど、セックスの頻度が低いことが分かったのです。
さらに驚くべきことも分かっています。
実は参加者には夫婦関係の満足度に関するアンケートもしていたのですが、その結果とセックスの頻度に相関はなかったのです。
つまり、自分で認識できている満足度はセックスに影響しなかったということです。(※1)
無意識の好感度のみが影響したのです。
もちろんこの実験から分かったのはあくまで相関関係ですから、無意識の嫌悪感がセックスレスにつながるということを証明するものではありません。
セックスをしないから嫌悪感が強まっているという可能性もあり得ます。
しかし、多くの方のセックスレスのカウンセリングをしている中で、夫に対して無意識の嫌悪感を抱いている妻が拒否しやすいことはほぼ間違いないと思います。
妻から拒否されて辛いという男性は知らないうちに妻に不快感を与えていないか言動を見直してみてください。
あなたにとってはほんの些細なことであっても、妻にとってはストレスとなっていることもあるかもしれないのです。
※1 他の実験では認識している満足度が性交頻度に影響することが分かっていますから、パートナーに分かりやすい満足感を与えることも大切です。
参考文献:Hicks LL, McNulty JK, Meltzer AL, Olson MA. Capturing the Interpersonal Implications of Evolved Preferences? Frequency of Sex Shapes Automatic, but Not Explicit, Partner Evaluations. Psychol Sci. 2016 Jun;27(6):836-47.