心理学者のロバート・スタンバーグが提唱した「愛の三角理論」というものがあります。
大衆向けの通俗心理学の本にも頻出の言葉なので、胡散臭く感じる人もいるかもしれませんが、恋愛に関する研究などでもしばしば用いられる理論です。
実はこの理論がエッチな気分を予測してくれるのです。
それだけでなく、あなたやパートナーのエッチしたい気分を高めることにも応用できるかもしれません。
今回は、何がエッチな気分に関係するのかということ、またそれとは独立して、エッチな気分になれない女性はどうすれば良いか?ということを解説したいと思います。
愛の三角理論とは
まず愛の三角理論について説明します。
これがどういうものか簡単にいうと、次の3つの要素の強弱によって、その愛の形が分類できるというものです。
- 親密性:親しさや絆、一緒にいることの安らぎ、幸福感
- 情熱:ドキドキと興奮する感覚、相手への性欲
- コミットメント:関係を維持するための努力
これら3つが全て高いレベルであると完全な愛となります。
仮に親密性だけが強く、他の2つが弱いと友達のような恋愛関係ということになります。
それぞれのバランスによって愛の形が変わってくるということです。
愛の三角理論の相互作用
愛の三角理論の要素は相互に作用することもあると、様々な研究で分かっています。
例えば、親密性が強まれば、情熱も強まるので性欲も沸くということです。
性欲についていえば、新しく出会ったばかりで相手のことをよく知らないときのほうが興奮するかもしれません。
しかし、すでに関係を築いて落ち着いている場合には親密性が強いほうがエッチな気分を高めてくれるのです。
親密性が90分後のエッチな気分を予測する
オープン・ユニバーシティのジャック・ヴァン・ランクフェルト博士らが面白い実験をしています。
親密性や性欲が1日の中でどう変化するか調べるために、134人の男女に1日10回、7日間に渡り報告させたのです。特殊な腕時計をつけさせて約90分間隔で確認するようにしました。
参加者はパートナーへの愛情や優しさ、温かさといった親密性や、セックスしたいか?誘われたらOKするか?というエッチな気分を報告しました。
そこから何が分かったかというと、まず、ある時点での親密性が強まるとその次(90分後)のチェック時のエッチな気分が強まっているということです。
しかし、その次の次(180分後)のチェック時にはその効果はなくなっていました。
つまり、親密性によって生じたエッチな気分は180分後には消えているということです。90分間隔のチェックなのでどの時点で気分が落ち始めるかは不明ですが…。
交際期間が長いほどエッチな気分にならない
この実験ではエッチな気分のなりやすさに年齢は関係ないことも分かっています。
しかし交際期間はネガティブな影響を与えました。
つまり、交際期間が長い人ほどパートナーとエッチなことをしたいという気分が弱い傾向にあるということです。
また「セックスがストレス発散になる人とならない人の違い」でストレスは性欲にプラスのこともあればマイナスのこともあると説明しましたが、今回はどちらにも影響ナシという結果でした。
愛着についての不安も確かめていますが、こちらもエッチな気分に影響していませんでした。
その気になったら夜まで待たない方が良い
今回の実験からいえることは、あなたがパートナーとの間でエッチな気分になったら、その時にセックスした方が良いかもしれないということです。
夜になったらしようと思っているとエッチな気分がなくなってしまうかもしれません。
セックスは必ずしも夜にしなければならないということはありません。
ムラムラしたら朝からセックスしても良いのです。
朝のほうがテストステロン量が多いので興奮しやすい人もいますし、その日を良い気分で過ごせる効果もあります。
親密性を強めてエッチな気分になる方法
親密性が強まることでエッチな気分も強まることが分かりました。
ということはエッチしたい気分を強めるには親密性を強めれば良いということになります。
そのためにはどうすれば良いのでしょうか?
実は愛の三角理論を提唱したロバート・スタンバーグは親密性について次のような要素を挙げています。
- 一緒にいることの幸福感
- パートナーに対する高い評価
- 親密なコミュニケーション
- 相互理解とサポート
他にもありますが代表的なものはこれくらいです。
これらを二人の間に構築すれば良いのです。
親密性は急に生まれない
日々の中でパートナーに対し全く親密性を感じない人もいるかもしれませんが、時間を掛ければ感じられるはずです。
親密性は情熱と違い急に沸いてくるものではないのです。
日常的にお互いを大切にしながら生まれるものです。
反対に相手の気持ちを考えずにいたら、親密性どころか憎悪が生まれます。
パートナーとの親密性について客観的に見直す機会をつくると二人の関係がより良いものとなります。
エッチな気分になれない女性はどうすれば良いか?
少し話が変わりますが、どんなに親密性を感じても、
彼氏や夫と性行為をする雰囲気になってもエッチな気分になれないということもあります。
この原因の一つとして安全性を感じ取れないことが挙げられます。
特に女性がエッチな気分になるためには安全な環境で安心することが必要なのです。
女性は特に切り替わりが難しい
人間に性欲があるとはいえ、いつでもエッチな気分になれるわけではありません。
例えば私(=男)は今この文章を仕事として書いていますが、目の前を裸の女性が通ったからと言って急にセックスしたい気分にはならないでしょう。
裸を見たことが性欲のきっかけとなって頭の中がエロい方向に向き始めることはあるかもしれませんが、したいテンションとなるまでは時間がかかると思います。
私は男性ですが女性は特に切り替わりが難しいと言えます。
パートナーがセックスしたがっているので応じてあげようとした時、自分も興奮しようと思ってもなかなか熱くなれなかったりします。
安全な環境でないとエッチな気分になれない
女性がエッチな気分になりにくい理由は複数ありますが1つは安心感が持てないことです。
この安心感を得るには2つの要因が必要です。
安全に生活できる環境と自分と生まれてくる子供を大切にしてくれる男性の存在です。
外敵に襲われたり、飢え死にしたり、夫から暴力を振るわれるような環境で出産するのはリスクが高いです。自分と子供の命に関わります。
ですからこのような環境を感じ取ったときは、脳が「子供を作っちゃダメだ」と判断し興奮のスイッチを入れないようにするのです。
反対に安全な家と食べ物、面倒見の良い夫がいれば妊娠中も安心ですし、子供ができた後もちゃんと育てることができます。
このような環境があれば「子供を作っても大丈夫」と判断するのでスイッチが入る条件は整ったといえます。(あくまで最低条件ですから必ずスイッチが入るわけではありません)
つまり性的刺激にさらされたときエッチな気分になれるかどうかは置かれた環境の影響を受けるということです。
画像からの刺激でも性的興奮のレベルが変化する
キール大学の面白い実験があります。
まず女性参加者に家や車などが写った画像を1.2秒ずつ10枚見せます。その後すぐに性的な画像を見せます。
そしてどれくらい興奮したかを0~100%で評価します。この手順を15回繰り返すというものです。
豪邸や高級車を見た後はエッチな気分になりやすい
事前に見せられる10枚の画像セットにはいくつかの種類がありましたが、それによって後から見せられる性的な画像への興奮度が変化することが分かりました。
豪邸や高級車、札束などの画像セットを見せられた後は、壊れた家や破片が散乱した部屋などの画像セットを見せられた後よりも、興奮度が高くなったのです。
これは安全に生活できる環境を想像したことで、興奮のスイッチが入る条件が整ったことが原因と考えられます。
また、子供に優しく接している男性などの写真セットと、怒りの表情の男性などの画像セットの比較では、前者を見た後のほうが興奮度が高くなることも分かっています。
これも、面倒見の良い男性を想像できたことが要因と考えられます。
☑︎女性の性欲スイッチを入れる因子を調べた研究。4パターンに分類できると判明
安全な環境や面倒見の良い男性を想起することが大事
単に豪邸や優しい人間の方が壊れた家や怒った人間よりも気分が良くなるからでは?と思うかもしれませんが、その可能性は低いと考えられます。
なぜなら、青空などの気分が良くなる画像セットと、タバコの吸い殻などの気分が悪くなる画像セットを見せた後の比較も行っていますが、そちらでは性的興奮に差は出ていないからです。
つまり、出産後の安全な環境や面倒見の良い男性を想起させるようなものでないと、効果が出ないということです。
エッチな気分になれない女性は、パートナーの優しさに注目したりしながら、安全性に目を向けましょう。
安全でない環境にいるなら変えましょう。
参考文献
・Jacques van Lankveld, Marieke Dewitte, et al. (2021). Predicting Sexual Desire in Daily Life from an Attachment Perspective: An Experience Sampling study.
・Ponseti J, Dähnke K, Fischermeier L, Gerwinn H, Kluth A, Müller J, Vogel S, Stirn A. Sexual Responses Are Facilitated by High-Order Contextual Cues in Females but Not in Males. Evol Psychol. 2018 Jan-Mar;16(1).