性機能を改善することが中年以降の認知機能の低下の防止につながるかもしれません。
勃起力が上がれば物忘れをしにくくなるかもしれないということです。
性機能と記憶などの脳の働きには相関があることが分かりました。
「もう年だから仕方ない…」と考えるのは危険
加齢により様々な身体能力が低下します。
性交時に勃ちが悪くなったり、挿入後に持続力できず中折れしたりというのも中年以降に起こりがちなことです。
これらの問題が発生したときに多くの人は「もう年だから仕方ない…」と考えてしまうことがあります。
しかし男性機能の低下を放置しておくのは危険かもしれません。
一つのリスクとしてはセックスレスとなり夫婦関係がギクシャクする可能性が挙げられます。セックスレスは離婚率を高める要因となり得ます。
それだけではなく男性自身の認知機能の低下につながるかもしれないのです。
男性機能の低下が近い将来の物忘れや理解力低下のシグナルである可能性があります。
勃起に問題のある人ほど記憶力や思考力にも問題の傾向があるのです。
性機能と脳機能の関係
性機能と脳機能の関係について調べたサンディエゴ州立大学のリキ・E・スレイディらの研究があります。
中年以降の男性800人以上の研究
この研究では800人以上の中年以降の男性を対象に性機能と脳機能について調べています。
性機能は国際勃起スコアで硬さや持続力について自己申告してもらったものです。
脳機能は記憶力や実行機能、処理速度などをテストしたものです。
勃起機能の低下は認知機能低下のシグナル
この研究では最初のテストをしてから6年後に同じ被験者に再びテストをしています。
つまり加齢による変化が観察できたということです。
その結果、まず分かったこととして多くの人は加齢によって性機能と性的満足度は低下するということです。
そしてさらに、研究の開始時に勃起機能が低かった参加者は、評価されたすべて認知機能のレベルが低かった傾向もありました。
また年齢が高く、独身で性的活動が少なく、身体の機能が低く、うつ症状が高い人々は、勃起機能が低い傾向があることも分かっています。
つまり、今の時点で勃起機能に問題のある人は数年後に記憶力の低下が起こるかもしれないということです。
(参考文献)Riki E Slayday, Tyler R Bell, Michael J Lyons, et al. (2023). Erectile Function, Sexual Satisfaction, and Cognitive Decline in Men From Midlife to Older Adulthood.
血流の問題が脳と男性器に影響する?
なぜこのようなことが起こるのか明確な原因は分かっていません。
一つの仮説としては血流の問題が考えられます。
勃起という現象は男性器に血液が集まって発生するものです。体内の血流が悪くなれば勃起力は低下します。
また脳の血流が悪くなると様々な認知能力に悪影響を及ぼすともされています。
つまり勃起力の低下が認知機能の低下につながっているのではなく、脳に悪影響を及ぼす血流の低下という現象が勃起力の低下というシグナルとして出ている可能性があるということです。
ランニングなどの有酸素運動が脳に良い影響を及ぼすことは多くの実験で判明しています。また有酸素運動は性欲を高めることや、勃起力をアップさせることにながるという研究もあります。
どちらも血流の改善が影響している可能性が高いですから脳機能と性機能に相関があるというのは不思議なことではありません。
夫の精力アップに努めている女性へ
セックスレスのカウンセリングに来る女性の中にも夫の性機能を改善するために、食事を変えてみたり、一緒に運動をしてみたりということをしている人が少なくありません。
中には夫の精力を高めるために必死になっている自分がはしたないような気持になるという人もいます。
それだけのことをしてレスが改善されれば納得もしやすいですが、一向に改善されないとやるせない気持ちになることもあります。
そのような気持ちにならないために、勃起力改善のための施策は脳の認知機能を改善する効果もあるということを頭の片隅に置いておくと心の安定を保てるかもしれません。