セックスレスの悩みを相談できるところは少なそうにみえて実はけっこう多いです。
当カウンセリングルームに相談に来る人の中にも、既に2、3カ所行ったことがあるケースは珍しくありません。
また高額なお金を使ったにも関わらず、一向に改善しなかったという人もかなり多いです。
セックスレスカウンセラーなる人たちに騙されてしまっているのです。
「セックスレスカウンセラー」に限らず「〇〇カウンセラー」「〇〇セラピスト」という肩書でレスの相談に乗っている人間は多いですが、玉石混交です。
ダメなカウンセラーに当たるとお金を無駄にするどころか、レスが余計に解消し難くなることもあります。
セックスレスカウンセラーのせいで余計に悪化する
セックスレスカウンセラーに相談したり、講習会に参加したという人から、その内容を聞いたり、資料を見せたもらうことがあります。
あまり他者を貶すことは言いたくないのですが、酷いものばかりです。まともなのは1割もないように思います。
「セックスレスの解消法」とネットで検索すれば出てくる情報をまとめただけのものや、誰でも思いつくようなありきたりなことばかりです。
中には「早めに夫婦で話し合いをする」「セクシーな下着をつける」「スローセックスをする」といった逆効果となることもあるアドバイスをしているものまであります。
セックスレスで不安になったり焦りを感じると、藁にもすがる思いでこういった内容を求めてしまいがちです。
しかし、セックスレスカウンセラーのせいで余計にレスが悪化することもありますから気を付けなければなりません。
ダメなセックスカウンセラーの共通点
相談者の話を聞いていると、ダメなセックスレスカウンセラーにはいくつかの共通点があるように思います。
今後、あなたが相談する先を選ぶ際の参考のために3つほど挙げておきます。
1.料金が高い
セックスレスの相談やカウンセリングは料金がバラバラです。1回の相談で数万円取るところもあります。
また講習やスクールのように複数回通わせるコースを用意し、まとめて何十万円と請求するところもあります。酷いところだと50万円以上します。
料金が高いほど効果も高いように思いがちですが、そんなことはありません。セックスレスのカウンセリングの料金と効果は比例しないのです。
個人的な意見ですが、セックスレスカウンセラーの料金として、1時間あたり2万円を超えていたらかなり高いです。
そして非常識な金額設定のところほど効果もイマイチなことが多いです。
比較して良いか分かりませんが、日本でトップとされる東京大学の学費は年間で50万円台です。国内トップの蔵書数を誇る図書館が使えて、一流の研究者に質問できる環境も含めてこの金額です。
セックスレスカウンセラーに何十万円も払っている人は、それと同等の価値があるのか考えてみましょう。
2.個人的な経験に基づくアドバイスしかしない
セックスレスカウンセラーの中には「10年間レスだった私が解消した方法を教えます」のようなことを言っている人も多いです。
しかし、レスになる原因は夫婦ごとに違いますし、何がレス解消のきっかけとなってセックスを再開するかも違うのです。全員に同じ方法が有効とは限りません。
個人的な経験に基づくアドバイスに従うのは危険です。
同様にAVや風俗業界で働いていた経験を活かしてやっているタイプも勉強不足な人が多い印象です。
業界出身というと「性」について詳しそうなイメージがありますが必ずしもそうでありません。
これらの業界出身者にセックスレスの相談をするのは、テレビドラマで医者役をやった俳優に病気の相談をするようなものです。
『ドクターX』主演の米倉涼子に体調不良を訴えても仕方ないのです。
3.「プロ」「専門家」を自称している
これはセックスレスカウンセラーに限った話ではないのですが、誰でも就ける仕事で「プロ」や「専門家」を自称している人には注意しましょう。
スポーツ選手や医師であれば別ですが、そういった職業でないのにプロや専門家を名乗るのは、実力の無さや社会的評価の低さに対するコンプレックスの表れです。
自分で専門家やプロと言う人ほど、分からないときでも知ったかぶりをすることがコーネル大学のスタブ・アティル博士らの実験でも分かっています。
セックスレスのカウンセリングをしている人にも「夫婦問題のプロ」とか「性の専門家」を自称している人は少なくありませんが、間違ったアドバイスをしてしまっている人ほどこういった肩書を使っていることが多いように思います。
余談ですが白衣を着ているカウンセラーも怪しい人が多い気がします。(病院等に勤務していて規則で着用が義務付けられている場合は別です)
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なぜセックスレスカウンセラーに騙されるのか?
なぜダメなセックスレスカウンセラーに騙されてしまうのでしょうか?
それは不安や焦りを感じているときは冷静な判断ができなくなるからです。
そして根拠のあるデータよりも、寄り添ってくれる人の話を信じるようになるのです。
これはテキサス大学のトレイシー・フレリング教授らの分析でも分かっています。
分かりやすく言えば次のどちらを信じようと思うかということです。
- 研究ではプランAが有効という結果が出ています。科学的根拠があるのだからAでいきましょう
- 私も同じ悩みを抱えていましたがプランBで解消しました。あなたが心配なのでプランBで早く元気になってください
不安を抱えているときは、寄り添ってくれる言葉が含まれたプランBを選ぶということです。
医療従事者や研究職のような科学的根拠の重要性を理解している人でも、スピリチュアルや、まじないのような似非科学に騙されてしまうのもこういった理由です。
このまま永遠にセックスレスなのではないか?出産できる年齢を過ぎてしまうのではないか?という不安を抱えている人は要注意です。
それらの不安がセックスレスカウンセラーのありきたりで具体性に欠けるそれっぽい話に騙される要因なのです。
セックスレスカウンセラーに何十万円も払うくらいなら、そのお金でジムに通うか、夫婦で刺激的な体験でセックスのマンネリを解消をしたほうが、レス解消には効果的です。
またセックスレスの原因が身体的なものや精神疾患に起因すると思われる場合にはまず病院に行くべきです。
日本の法律においては、診察、診断、治療は医師以外が行うことは出来ないのですから。
【参考文献】
・Atir S, Rosenzweig E, Dunning D. When Knowledge Knows No Bounds: Self-Perceived Expertise Predicts Claims of Impossible Knowledge. Psychol Sci. 2015 Aug;26(8):1295-303. doi: 10.1177/0956797615588195. Epub 2015 Jul 14. PMID: 26174782.
・Freling, Traci H.; Yang, Zhiyong; Saini, Ritesh; Itani, Omar S.; Rashad Abualsamh, Ryan (2020). When poignant stories outweigh cold hard facts: A meta-analysis of the anecdotal bias. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 160, 51–67.