セックスで興奮しないという女性は、ステレオタイプに縛られている可能性があります。
それによって、セックスが服従的なものであるという認知ができ、自律性が失われます。
自律性は人間の基本的な欲求であり、性的興奮やオーガズムにも影響を与えるものです。
バックラッシュ効果とは
日本には、「女性は優しく謙虚に相手を立てるべき、男性は力強く競争に勝つべき」といった性的ステレオタイプがあります。
こういったステレオタイプに従わないと「女のくせに」「男のくせに」と言われます。直接的な嫌がらせをされることもあります。
このように文化的なステレオタイプにそぐわない行動に対して社会的な制裁が生じることを「バックラッシュ効果」と呼びます。
そして私たちはバックラッシュ効果を避けるよう動機づけられています。
特に女性は「従順」というステレオタイプから外れた行為をすると反逆的とみなされ不利益を被ることが多いです。
そのため、自分を抑えて従順な態度を選択することがあります。嫌だと思っていても自己主張せずに従ってしまうことがあるのです。
これは性的行動においても同様です。女性は受動的態度が望ましいというステレオタイプがあります。
それに反することはバックラッシュ効果を生みます。そのため服従するのです。
つまり女性にとってセックスと服従は暗黙的に結びつけられているといえます。
そしてこのことがセックスで興奮しないことにつながるのです。
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自律性が失われるとセックスで興奮しない
なぜセックスと服従を関連づけると興奮しないのでしょうか?
それは自律性が失われるからです。
自分のことは自分で自由に決めたいというのは人間の基本的な欲求です。
これが満たされることで活力が生まれ、パフォーマンスが向上し、幸せを感じるのです。
これはセックスに関しても同じです。
するかしないか、どんなプレイにするかといった複数の選択肢から主体性をもって決めることで楽しめるのです。
性的な自律性が女性の性交の楽しみやオーガズムに影響することがいくつかの研究でも示唆されています。
バックラッシュ効果を恐れてステレオタイプに沿うような性的役割を演じることは、セックスの興奮を抑制することにつながります。
暗黙的に結びつけているモノが分かるテスト
セックスと服従を結びつけ、自律性が失われることで興奮しなくなることはラトガース大学のダイアナ・サンチェス博士らの実験でも判明しています。
この実験では女性参加者に、モニターに表示された文字が「意味のある単語」か「無意味な文字列」かを素早く判断してボタンを押すというタスクをやってもらいました。
このとき文字が表示される前に事前刺激として別の単語が表示されます。
この事前に表示される単語と次に表示される単語を結びつけて考えている場合、判断までのスピードが速くなります。
なぜなら脳の準備が整っている状態ということだからです。
例えば「リンゴ」と表示された後に「果物」と表示された時はそれが意味のある単語だと素早く判断できます。
しかし、「リンゴ」の後に「職業」という単語が表示された時は判断が遅くなります。なぜなら多くの人はリンゴと職業を結びつけていないからです。
女性はセックスと服従を暗黙的に結びつけている
今回の実験では、「セックス」などの性的な単語、「家」などの性的でない単語、「従う」などの服従的な単語、「教養」などの支配的な単語、そして「QWER」などの意味のない文字列が使用されました。
そして、判断に掛かる時間を確認したところ、性的な単語の後に服従的な単語を見た時の判断スピードが速いことが分かりました。
つまり女性はセックスと服従を暗黙的に結びつけているということです。
また、「性行為中に服従的な役割を取る傾向があります」などの質問に同意する女性ほど、性的な単語の後に服従的な単語を見た時の判断が速いことも分かりました。
性的興奮の程度についても聞き取っていますが、セックスと服従を結び付けている女性ほど、興奮しにくいことも分かりました。
(男性にも同様の実験を行っていますが、男性ではこのような結果は出ませんでした。つまり、男性はセックスを服従とは結び付けていないということです。ちなみに支配とも結びつけていません)
どうすればセックスで興奮するのか?
もし、あなたがバックラッシュ効果を恐れているせいで、セックスで興奮しなくなっている場合にどうすれば良いでしょうか?
それは世の中のステレオタイプの影響によって作られた、「受け身でいるべき」「性的な希望は隠すべき」といった誤った信念を捨てることです。
こういった信念がセックスにおいて自分を解放しにくくしているのです。
特に女性はメンタルの状態が性欲や感じ方に影響します。
セックスを楽しむ気持ちを持っている人のほうがオーガズムに達しやすいことも分かっていますから、遠慮なく自我を出しましょう。
また、女性が積極的に性を楽しんでいる方が、男性の興奮度が高まることも覚えておきましょう。
プレイとしての服従とは意味が違う
余談ですが、自分はドMだから服従的なセックスがしたいという人もいるかもしれません。
しかしSM的な服従と、バックラッシュ効果を避けるための服従は違うものです。
プレイとしての服従は女性が主体的に選ぶものですから、そこに他者からの圧力や強制力はありませんので、自律性は保たれますし、興奮もできます。
むしろSM趣味を持っている人はそうでない人より精神的に安定しているという研究さえあります。
同じ服従であっても意味が全く異なりますので間違えないようにしてください。
仮に圧力によって服従している状態に心地良さを感じていたり、そこから抜け出せないという人は、愛着の問題を抱えているのかもしれません。
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参考文献:Sanchez DT, Kiefer AK, Ybarra O. Sexual submissiveness in women: costs for sexual autonomy and arousal. Pers Soc Psychol Bull. 2006 Apr;32(4):512-24.